ゲーミングマウスパッド

Logicool G640s 定量レビュー

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Logicool G640s ゲーミングマウスパッドをレビューする。

Logicool

G640s

G640sは「高かろう良かろう、安かろう悪かろう」ということわざがちょうどぴったりのマウスパッドである。

競技シーンに求められる性能を満たしていないベース、クセを考慮しなければならない横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の初動の差など、問題点が多々あった。

もちろん評価できる特徴も存在し、扱いやすいスティックスリップの傾向、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の平均動摩擦力の差が小さい点などもあるので、本レビューではG640sのすべてを紐解いていく。

販売価格 3,305円~

総合評価(AからEの5段階評価)

C (2023/08/21)

滑り出しのタイプ

並み に分類

滑走速度のタイプ

バランスタイプ に分類

スペック

表面熱処理繊維・クロス素材
ベースラバー
寸法460×400×3 mm
ステッチの有無なし

長所

・価格が安く、在庫が潤沢なので、いつでもどこでも入手しやすい。

・湿度変化によって、滑走速度と標準偏差の違いが起きにくい。

注意点

・右下のロゴはフィルム転写プリントのため、マウスパッド本来の風合いと異なり、段差がある

・ステッチ処理がないため、使用頻度・環境によって、表面とスポンジが剥離する可能性がある

短所

・湿度変化によって、滑り出しの初動に変化が大きく生じる。

・マウスの移動方向に追従してマウスパッドの位置がずれる防滑性が乏しいベース。

製品・メーカーについて

Logicool (海外市場ではLogitech) G640sは、同社のベストセラーゲーミングマウスパッドであるG640シリーズの3代目になる現行(2023年時点)モデルだ。同製品は世界中に安定的に供給されており、日本では様々な実店舗やネットショップで入手可能である。
また、日本中の家電量販店等に必ずといっていいほど展示機が置いてあるため、各地で気軽に触れることができる稀有なマウスパッドでもあるので機会があれば是非触れて頂きたい。

画像1:2代目G640r表面
画像2:3代目G640s表面
画像3:2代目G640rサイドと裏面
画像4:3代目G640sサイドと裏面

外見から判別できる先代G640rとの違いは以下の通り。

  • スポンジ兼ラバーのカラーがブルーからブラックに変化
  • マウスパッドの右下のブランドロゴのカラーがホワイトからダークグレーに変化
  • 外装が六角柱から四角柱の箱に変化

バリエーションと販売価格

G640s以外のLogicoolのゲーミングマウスパッドのバリエーションは以下の通り。

  • G240f(クロス・340×280×1mm)
  • G440f(ポリエチレン・340×280×1mm)
  • G740(クロス・460×400×5mm)
  • G840(クロス・900×400×3mm)

G640s系統の純粋なバリエーション違いは、3mm厚でサイズ違いのG840のみであり、G840以外は材質や厚みの点で厳密には異なる。

製品仕様・スペック

表面は熱処理繊維のクロス素材。サイズは460×400×3mmのみ。ステッチ処理なし。ベースの滑り止めは防滑パターンが施されているラバー素材。

梱包状態・巻き癖

画像5:G640s外装

G640sの外装は四角柱の箱になっており、本体はロールされて梱包されている。

画像6:G640sベース側方

外装から引き抜いた直後は若干巻き癖は残るが、G640s本体の自重で時間経過でフラットな状態になるだろう。

デザイン

画像7:G640s俯瞰

カラーはシンプルなブラック1色のみ。カラーやプリントのバリエーションを用意しないことで、静動摩擦力や標準偏差の違いを考慮しなくて済むだろう。

マウスパッド右下にはフィルム転写プリントのロゴが印刷されており、質感はマウスパッド本来の風合いと異なり、段差もあるので留意していたほうがよい。

サイズ

G640sのサイズは460×400×3mmで、長方形のラージサイズとなっている。

ステッチの有無・パイピングの質

画像8:G640s表面側方

G640sはステッチやパイピングの類はの画像の通り、施されていない。故に使用頻度・環境などによっては、表面と中間層が剥離する可能性が否めない。

ベース

画像9:G640sベース俯瞰
画像10:G640sベース拡大

G640sのベースは防滑パターンが施されたラバー素材が採用されているが、筆者の環境(Flexispotメラミン化粧板ブラック天板・IKEAメラミン仕上げ天板トロッテン・無印良品デスク天板オーク材・無印良品パイン材テーブル)では、マウスの移動方向に追従してマウスパッドの初期位置がずれるため、性能は良いものとは言い難い。

G640sを設置する天板の材質や表面処理によって、滑り止めの効き具合が左右されるのでゲーミングマウスパッドに求められる滑り止めとしては破綻している。G640sを安定して使用するために筆者は、HID-Labs製ガラスマウスパッド「GLASS PAD RINK」やNINJA RATMAT製「メタルマウスパッド各種」に付属してくる滑り止めシートをG640sの下に敷くことで位置がずれる問題を解決した。

安定して使用するためには、脆弱な防滑性に手を打つ必要があり、滑り止めシートなどをあらかじめ準備しておくことを強くおすすめする。

表面の質感

画像11:マウスパッド表面組織比較倍率2倍
画像12:マウスパッド表面組織比較倍率4倍

G640sの滑走面には熱処理が施されたクロス素材が採用されている。強い光を当てると表面は艶が出て、手触りはしっとりとした質感である。編み目が細かく、繊維のほとんどが寝ているので凹凸が少ない。

拡大写真を撮影する際、マウスパッドの位置が斜めにずれないようにガイドと平行に合わせて撮影したが、G640sの表面組織の傾きが他の3種類のマウスパッドと比べて右斜め上に走っているように見える。

編み方のパターンや密度はそれぞれ違うが、糸の細さは4種類のマウスパッドすべてが似通っており画像では甲乙つけ難い。

各種測定装置の説明と測定方法について

以降の硬度、初動の評価、スティックスリップ、滑走速度、湿度による滑りの変化、センサー相性などの測定方法や評価に関する詳細な事柄は、別途下記専用ページを参照していただきたい。

ゲーミングマウスパッドの評価について
ゲーミングマウスパッドの評価について

硬度

G640sの硬度は表面側は55、ベース側は54であった。これは我々がデータをとったマウスパッドの中で、リファレンスマウスパッドとして定める標準的な硬さ50を指し示したZOWIE G-SR-SE SERIESよりも硬い。

マウスパッドの硬度のばらつきは、SからEの6段階評価の中で表面側はA評価(分散0.3以上0.6未満)と非常に優秀で、ベース側はS評価(分散0.3未満)卓越して優秀であった。

G640s硬度中央値硬度分散評価
表面硬度55A
ベース硬度54S
表1:G640s硬度(GS-743G タイプE2で測定)
G-SR-SE硬度中央値硬度分散評価
表面硬度50A
ベース硬度50A
表2:G-SR-SE硬度(GS-743G タイプE2で測定)

G640sの表面とベースの硬度はほぼ変わらない。G640sのような薄いマウスパッドだと、ベースの硬度が直接的にマウスパッド表面の硬度になっていると思われる。

画像13:G640sベース側方(ボイド)

G640sの初動の評価

G640sの静止状態から動き始めの最大静摩擦力は、横方向(X軸方向)は並みで、縦方向(Y軸方向)は重たい。そしてその差は大きい。

滑走中から切り返した後の最大静摩擦力は、横方向(X軸方向)は並みで、縦方向(Y軸方向)は重たい。そしてその差はさらに大きくなる。

最大静摩擦力とは

マウスパッドの最大静摩擦力は、①静止した状態から動き出したときの初動の最大静摩擦力と②滑走中から反対方向に切り返したときの最大静摩擦力に違いが生まれるものと、そうでないものが存在することが判明しており、それぞれの値を以下の表に示す。

マウスパッドの初動の評価は、最大静摩擦力だけでは説明することができない。最大静摩擦力に加え、スティックスリップの大小、そのスパン、マウスパッドの硬度などが関係し合っていると考えている。

G640s(湿度60%)横方向(X軸方向)
最大静摩擦力
縦方向(Y軸方向)
最大静摩擦力
Y軸-X軸の
最大静摩擦力の差
①静止状態から動き始め98.450 gf110.625 gf12.175 gf
②滑走中から切り返し後90.530 gf113.895 gf23.365 gf
①-②の差0.880 gf-3.270 gf
表3:G640s(湿度60%)静止状態から動き始めの初動と切り返し後の初動とその差

G640sの①静止状態から動き始めの最大静摩擦力は

  • 横方向(X軸方向)滑り出しの最大静摩擦力は98.450 gfであり、初動の重さ・軽さはデータベース上、並みである。
  • 縦方向(Y軸方向)滑り出しの最大静摩擦力は110.625 gfであり、初動の重さ・軽さはデータベース上、重たい。
  • 横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の最大静摩擦力の差は、縦方向(Y軸方向)優勢の12.175 gfで、その値は大きい差である。

G640sの②滑走中から切り返した後の最大静摩擦力は

  • 横方向(X軸方向)滑り出しの最大静摩擦力は90.530 gfであり、①より0.880 gf軽くなる。そして、初動の重さ・軽さはデータベース上、並みである。
  • 縦方向(Y軸方向)滑り出しの最大静摩擦力は113.895 gfであり、①より3.270 gf重たくなる。そして、初動の重さ・軽さはデータベース上、重たい。
  • 横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の最大静摩擦力の差は、縦方向(Y軸方向)優勢の23.365 gfであり、①の差よりも11.190 gf重たくなる。その値の差は大きい。

最大静摩擦力の数値がよく似たマウスパッド

本製品とよく似た、静止状態から動き始めの最大静摩擦力を示すマウスパッドを以下に挙げるが、滑走中から切り返した後の最大静摩擦力や、硬度やスティックスリップ、標準偏差、厚み、反発弾性については全く考慮していないので、実際のフィーリングと異なる点に留意していただきたい。

  • G-SR-SE DIVINA Blue
  • ODIN GAMING Infinity

スティックスリップ

スティックスリップとは

静止状態から動き出し始めた時に生じた静摩擦から動摩擦が安定するまでの間に発生する、滑りと固着とが交互に起きる間欠運動である。300種類以上のマウスパッドを測定してきた経験上、ほとんどのマウスパッドにスティックスリップ現象を確認している。

スティックスリップが発生しているからといって、設計品質や製造品質に問題があるという訳ではないことに強く留意していただきたい。

スティックスリップは、実際のフィーリングで表現するとマウスパッドのキレやもたつきに相当し、発生していないか、そのスパンが非常に短いほどキレがよいマウスパッドになる。逆にスパンが長かったり、振幅が大きいほど初動にキレがない、ぬるっとしたマウスパッドになる。

あくまで仮説だが、キレがあるマウスパッドはAPEX LEGENDSのような非常に高い頻度でエイム操作を求められたり、トラッキングエイムを主するゲームではもたつきを感じにくく、疲れにくいので、そのようなマウスパッドが合っているかもしれない。逆にVALORANTのようなプリエイムやフリックエイムを主とし、高い頻度でエイム操作をすることが稀なゲームタイトルをメインでプレイする場合は、スティックスリップが精密なエイムを補助するのではないかと考えている。

また、硬度が柔らかくなるほど、不規則かつ長いスパンでスティックスリップが発生しやすく、硬度が硬いほど、スティックスリップが短くなる傾向にあるが、もちろんイレギュラーも存在する。

G640sは、最初に最大静摩擦力を迎えてから動摩擦力が安定するまでの間にスティックスリップ現象が発生している。時間経過と共にそれが徐々に解放されていく極めて典型的な波形を示している。

画像14:G640s静止状態から動き始めのスティックスリップ現象
画像15:G640s滑走中から切り返し後のスティックスリップ現象

スティックスリップ現象が発生している時間は①静止状態から動き始めは約0.55秒であり、②滑走中から切り返し後は約0.86秒で、①よりも0.31秒長かった。

滑走速度

G640sの滑走速度は、バランスタイプに分類できる。

G640sの滑りは横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に並み程度滑る。そしてその差は小さいが考慮すべきである。

G640sの滑りの平均値に対する数値のばらつきは横方向(X軸方向)はやや大きく、縦方向(Y軸方向)は大きいので滑らかな表面ではない。

動摩擦力とは

物体が動き出した後の摩擦力のことで、動いている物体にかかる摩擦力。つまり初動とスティックスリップを超えたあとに人が感じるマウスパッドの「滑走速度」と表現されているものある。

ゲーミングマウスパッドの動摩擦力は、①静止状態から動き始めと②滑走中から切り返し後とで明らかな違いは認められず、非常によく似た数値と波形を示すことが分かっている。

標準偏差とは

標準偏差とは、あるデータが平均値からどの程度外れているかを示す指標である。この場合、動摩擦力のデータが平均値周辺でどの程度ばらついているかが分かる。これは平均動摩擦力が同じ値を示していても、仮に標準偏差が1.0と2.0のふたつが出た場合、前者のほうが滑り易く、後者のほうが滑りにくいものだということが分かる指標になる。

また、一概に標準偏差が小さいほど良いものであったり、大きいほど悪いものだという訳では全くない点に留意いただきたい。

標準偏差は、触覚でいう「マウスパッドの表面の滑らかさや粗さ」や、マウスパッド本体の「柔らかい・硬い」など複合的な要素によって左右されると考えている。

新東科学株式会社 摩擦摩耗試験機の選び方
新東科学株式会社 摩擦摩耗試験機の選び方

マウスパッドの滑走速度は動摩擦力だけでは説明ができない。動摩擦力と標準偏差と硬度などの要素が関係し合っていると考えている。

動摩擦力を測定して得られた生データに、それに対応する標準偏差を重みとして加えた③加重平均動摩擦力と、標準偏差の結果は表の通りである。

G640s(湿度60%)横方向(X軸方向)縦方向(Y軸方向)Y軸-X軸の差
③加重平均動摩擦力23.542 gf29.458 gf5.916 gf
標準偏差1.7032.047
表4:G640s(湿度60%)加重平均動摩擦力と標準偏差

G640sの③加重平均動摩擦力は

  • 横方向(X軸方向)は23.542 gfであり、20.000 gfから24.999gfの範囲内に収まっているので、スピードバランスに分類されるが、標準偏差が1.703であるため、フィーリングはやや弱くバランス寄りになる。
  • 縦方向(Y軸方向)は29.458 gfであり、25.000 gfから29.999gfの範囲内に収まっているので、バランスタイプに分類されるが、標準偏差が2.047であるため、フィーリングは中程度コントロール寄りになる。
  • 横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の差は5.916 gfとやや小さいが、考慮すべき差である。

動摩擦力の波形について

画像16:G640sXY軸動摩擦力(切り返し前)波形
画像17:G640sXY軸動摩擦力(切り返し後)波形

切り返し前と後に関わらず、G640sの横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の動摩擦力の波形は、マクロでは全体的に大きく逸脱した波形は認められず、ミクロでは横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に、目立つ振幅が分かるので、平均動摩擦力に対するデータのばらつきの様子が見てとれる。

加重平均動摩擦力がよく似たマウスパッド

本製品とよく似た③平均動摩擦力の加重平均値を示すマウスパッド以下に挙げるが、硬度や標準偏差、厚みについては全く考慮していないので、実際のフィーリングと異なる可能性がある点に留意していただきたい。

  • Steelseries QcK Large Neon Rider
  • ODIN GAMING Andromeda Cloth Mouse Pad XL

湿度による滑りの変化

G640sの湿度ごとの初動と滑走速度の変化について評価する前に、湿度50%と60%でそれぞれ測定した理由について、気になる場合は以下のリンクを参照願いたい。

ゲーミングマウスパッドの評価について
ゲーミングマウスパッドの評価について

なお、湿度50%のデータはすべて暫定値であり、今後加筆修正する際にデータや評価が変わることが十分あり得るため、ご理解いただきたい。

湿度50%と60%の横方向(X軸方向)の初動の違い

G640sは湿度変化によって初動が大きく変化する。

G640sの横方向(X軸方向)の初動は、湿度変化によって①と②の関係性が逆転していることに注意するべきだろう。

  • ①静止状態から動き始めは、湿度50%よりも湿度60%のほうが滑り出しが8.700 gf重い。
  • ②滑走中から切り返し後は、湿度50%よりも湿度60%のほうが滑り出しが12.235 gf軽い。
G640s横方向(X軸方向)湿度50%(暫定値)湿度60%(確定値)湿度60%-50%の差
①静止状態から動き始め89.750 gf98.450 gf8.700 gf
②滑走中から切り返し後102.765 gf90.530 gf-12.235 gf
①-②の差-13.015 gf7.920 gf
表5:G640s X軸の湿度50%(暫定値)と湿度60%(確定値)の初動と切り返し後の最大静摩擦力とその差

湿度50%と60%の縦方向(Y軸方向)の初動の違い

G640sの縦方向(Y軸方向)の初動は、湿度60%のほうが湿度50%よりも重たくなる。

  • ①静止状態から動き始めは、湿度50%よりも湿度60%のほうが滑り出しが21.175 gf重い
  • ②滑走中から切り返し後は、湿度50%よりも湿度60%のほうが滑り出しが9.735 g重い
G640s縦方向(Y軸方向)湿度50%(暫定値)湿度60%(確定値)湿度60%-50%の差
①静止状態から動き始め89.450 gf110.625 gf21.175 gf
②滑走中から切り返し後104.160 gf113.895 gf9.735 gf
①-②の差-14.710 gf-3.270 gf
表6:G640s Y軸の湿度50%(暫定値)と湿度60%(確定値)の初動と切り返し後の最大静摩擦力とその差
ゲーミングマウスパッドの評価について
ゲーミングマウスパッドの評価について

湿度50%と60%の横方向(X軸方向)の滑走速度と標準偏差の違い

G640sは湿度が変化しても、横方向(X軸方向)の滑走速度と標準偏差に変化はほとんど起きない。

加重平均動摩擦力は、湿度50%のほうが湿度60%よりも滑りは重たくなるが、その差は3.771 gfであり、考慮しなくてよいほど小さい。

G640s横方向(X軸)湿度50%(暫定値)湿度60%(確定値)湿度60%-50%の差
③加重平均動摩擦力27.313 gf23.542 gf-3.771 gf
標準偏差1.6531.703
表7:G640s X軸の湿度50%(暫定値)と湿度60%(確定値)の生データと加重平均をとった動摩擦力とその差

湿度50%と60%の縦方向(Y軸方向)の滑走速度と標準偏差の違い

G640sは湿度が変化しても、縦方向(Y軸方向)の滑走速度と標準偏差に変化はほとんど起きない。

湿度50%と60%の縦方向(Y軸方向)の加重平均動摩擦力の差は0.102 gfで無視して良いほど小さい。

G640s縦方向(Y軸)動摩擦力
湿度50%(暫定値)
動摩擦力
湿度60%(確定値)
動摩擦力
湿度60%-50%の差
③加重平均動摩擦力29.356 gf29.458 gf0.102 gf
標準偏差1.9962.047
表8:G640s Y軸の湿度50%(暫定値)と湿度60%(確定値)の生データと加重平均をとった動摩擦力とその差

類似マウスパッドとの比較

G640sと比較する対象に、価格帯・入手性・材質・厚みなどの複数の点で類似しているRAZER Gigantus v2を選んだ。

Razer Gigantus V2 との比較

画像18:G640sとRazer Gigantus V2の表面組織の比較

RAZER Gigantus v2は後日改めてレビューさせていただくため、直接的なデータ比較は割愛する。

  • 硬度はG640sのほうが柔らかい。
  • 静止状態から動き始めの初動(最大静摩擦力)は、ほぼ変わらない。
  • 滑走中から切り返し後の初動(最大静摩擦力)は、複合的に大きく異なる。
  • 滑走速度(平均動摩擦力)は、G640sのほうが軽い。
  • 標準偏差は、G640sのほうが大きく横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)に大きな差がある。
  • 表面組織は、G640sのほうが規則的で目が詰まってないように見える。

対センサー相性

Q
測定条件と掲載センサー

測定条件

  • グラフ xSum(m/s)-Time
  • 移動量 1inch
  • 最大速度 300mm/min
  • 加速度 200mm/s^2
  • DPI 800
  • PollingRate 1000Hz

掲載済み

  • PMW 3360 (BenQ ZOWIE ZA13-C)
  • PAW 3370 (Endgame Gear XM2we)
  • PMW 3389 (ZYGEN NP-01)
  • PAW 3395 (Pwnage StormBreaker)
  • HERO 25K (Logicool G PRO X SL)
  • Focus + (Razer Viper Ultimate)
  • Focus Pro 30K (Razer Viper V2 Pro)
  • Finalsensor (Finalmouse Starlight-12)

2023年8月時点の現行マウスセンサー8種類で相性テストを行った結果、特に不良は確認されなかった。

PixArt社製

画像19:PMW 3360 (BenQ ZOWIE ZA13-C)
画像21:PAW 3370 (Endgame Gear XM2we)
画像23:PMW 3389 (ZYGEN NP-01)
画像25:PAW 3395 (Pwnage StormBreaker)

独自開発/提携

画像20:HERO 25K (Logicool G PRO X SL)
画像22:Focus + (Razer Viper Ultimate)
画像24:Focus Pro 30K (Razer Viper V2 Pro)
画像26:Finalsensor (Finalmouse Starlight Pro TenZ)

使用感

ここからは筆者の主観とこれまでのデータを織り交ぜながら、G640sの使用感を書いていく。なお使用マウスはG Pro X SuperlightにESPTIGER マウスソール Arc2 G Pro X Superlight用を組み合わせたものである。

G640sは厚さ3mm(実測値3.03mm)でクッション性を感じる最低限の厚さを確保しつつ、表面硬度は54で硬すぎず柔らかすぎないバランスで調整されているので、エイム操作時に鉛直方向に荷重をかけてしまう人でも、G640sはクッション性があるので一応使える。マウスを押し下げることで追加の摩擦と乗り越え抵抗を得ることは可能だが、大きく期待できるほどでもない。

マウスを摺動させる表面に不規則な凹凸を感じて不快であった。これはやはり中間層が発泡体でできているから避けれない運命なのだろうか。

滑り出しの軽さ・重さ(最大静摩擦力)と滑走速度(動摩擦力)共に、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)とで滑りの差があり、慣れるのに多少なり時間がかかった。慣れた後でも筆者はこのマウスパッドは好きにはなれない。

G640sは時間経過と共にスティックスリップが徐々に解放されていく典型的なパターンを示しているので、扱いに慣れるまで簡単な部類に入ると思うが、マウスの切り返し操作にもたつきを嫌い、エイムのキレを求める人には向いていない。つまり、トラッキングエイムが主となるゲームタイトルをプレイしている人には向いていないと考える。

先ほどでも解説したとおり、G640sのスティックスリップの存在とその扱いに慣れるまで簡単なパターンは、VALORANTやCS2のようなプリエイム・フリックエイムが主となるゲームタイトルをプレイする人にとって、精密なエイムをアシストすることが期待できるので、そちらのほうが合っているのではないかと思う。

総合評価

G640sの性能や質は、「高かろう良かろう、安かろう悪かろう」ということわざがちょうどぴったりのマウスパッドである。

そもそもマウスパッドは消耗品である。どんなマウスパッドであれ、布製マウスパッドは新品のパフォーマンスはいつまでもコンスタントに続かない。必ず性能は劣化する。消耗し劣化すれば買い替える必要に迫られる。

Logicool G640sは、ゲーミングマウスパッドの類で安い価格で購入することが可能な上に在庫が潤沢なので、欲しいときにいつでもどこでも入手可能である点で非常に優れている。特にこだわりのないPCゲーム初心者やマウスパッドについて何も知識がない方がマウスパッド選びに悩んだとき、とりあえず最初に買ってみるマウスパッドとしておすすめできる。

2023年時点の競技シーンに登場するメインストリームのゲーミングマウスパッドは5000円弱から高くて8000円強の価格帯で入手可能で、それらは確かに性能や質の面でそれなりに優秀さが担保されている。しかし、粗悪なものを知らずして優れたものを語るのは、変な話であるので目の肥えた方も一度、Logicool G640sを手にとってみてはいかがだろうか。

Logicool

G640s

販売価格 3,305円~

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