Logicool G740TH 定量レビュー
Logicool G740TH ゲーミングマウスパッドをレビューする。
G740TH
このレビューを読んで、あなたがFPSゲームなどにおいて絶対的な勝利を目指すならこのG740THは買うべきではない。
G740THは、勝利に強く拘らず、Logicoolという世界一のゲーミングデバイスメーカーのブランド名を冠したゲーミングマウスパッドが、ゲーミンググレードや競技シーンに求められる最低限の性能を満たしていなくてもそれで良くて、他社のゲーミングマウスパッドよりも安い価格で、いつでもどこでもほしいときに同じ消耗品を買えるポイントがとても合理的だと感じるような人に向いている。
総合評価(AからEの5段階評価)
D (2023/9/8)
滑り出しのタイプ
並み に分類
滑走速度のタイプ
バランスタイプ に分類
スペック
表面 | 熱処理繊維・クロス素材 |
ベース | ラバー |
寸法 | 460×400×5mm |
ステッチの有無 | なし |
長所
・価格が安く、在庫が潤沢なので、いつでもどこでも入手しやすい。
・湿度変化によって、初動と滑走速度と標準偏差の違いが起きにくく、湿度変化に強い。
注意点
・右下のロゴはフィルム転写プリントのため、マウスパッド本来の風合いと異なり、段差がある。
・ステッチ処理がないため、使用頻度・環境によって、表面とスポンジが剥離する可能性がある。
・製造品質に問題を抱えている個体が流通している可能性があるので品質確認すべき。
短所
・マウスの移動方向に追従してマウスパッドの位置がずれる防滑性が乏しいベース。
・硬度のばらつきが著しく、平滑性に欠ける。
バリエーションと販売価格
G740TH以外のLogicoolのゲーミングマウスパッドのバリエーションは以下の通り。
- G240f(クロス・340×280×1mm)
- G440f(ポリエチレン・340×280×1mm)
- G640s(クロス・460×400×3mm)
- G840(クロス・900×400×3mm)
2023年9月時点でG740TH系統の厚さ5mmの純粋なサイズやバリエーション違いはない。
製品仕様・スペック
表面は熱処理繊維のクロス素材。サイズは460×400×5mmのみ。ステッチ処理なし。ベースの滑り止めは防滑パターンが施されているラバー素材。
ベース
G740THのベースは防滑パターンが施されたラバー素材が採用されている。筆者の環境(Flexispotメラミン化粧板ブラック天板・IKEAメラミン仕上げ天板トロッテン・無印良品デスク天板オーク材・無印良品パイン材テーブル)では、マウスの移動方向に追従してマウスパッドが初期位置からずれるため、分厚くて重たい割には滑り止めの性能は良いものとは言い難い。
G740THを設置する天板の材質や表面処理によって、滑り止めの効き具合が左右されるのでゲーミングマウスパッドに求められる滑り止めとしては破綻している。G740THを安定して使用するために筆者は、HID-Labs製ガラスマウスパッド「GLASS PAD RINK」やNINJA RATMAT製「メタルマウスパッド各種」に付属してくる滑り止めシートをG740THの下に敷くことで位置がずれる問題を解決した。
安定して使用するためには、脆弱な防滑性に手を打つ必要があり、滑り止めシートなどをあらかじめ準備しておくことを強くおすすめする。
各種測定装置の説明と測定方法について
以降の硬度、初動の評価、スティックスリップ、滑走速度、湿度による滑りの変化、センサー相性などの測定方法や評価に関する詳細な事柄は、別途下記専用ページを参照していただきたい。

硬度
G740THの硬度は表面側は54、ベース側は48であった。これは我々がデータをとったマウスパッドの中で、リファレンスマウスパッドとして定める標準的な硬さ50を指し示したZOWIE G-SR-SE SERIESよりも前者はやや硬く、後者はやや柔らかい。
マウスパッドの硬度のばらつきは、SからEの6段階評価の中で表面側はD評価(分散1.4以上1.8未満)とやや不十分で、ベース側はE評価(分散1.8以上)と不十分である。
G740TH | 硬度中央値 | 硬度分散評価 |
---|---|---|
表面硬度 | 54 | D |
ベース硬度 | 48 | E |
G-SR-SE | 硬度中央値 | 硬度分散評価 |
---|---|---|
表面硬度 | 50 | A |
ベース硬度 | 50 | A |
G740THの硬度は
- 表面硬度54であり、同社製品G640sの表面硬度55よりも1硬いが誤差の範囲内でほぼ変わらない。
- ベース硬度48は、同社製品G640sのベース硬度54よりも柔らかい。
- 表面とベース共に著しいばらつきが生じている。G740THの中間層は非常に分厚い発泡体で組織されており、無数のボイドの影響で平滑性に欠けている。

G740THの初動の評価
G740THの静止状態から動き始めの初動は横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に並みである。横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の差は小さい。
滑走中から切り返した後の初動は横方向(X軸方向)はとても重たくなり、縦方向(Y軸方向)は重たい。そして、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の差はとても小さい。
マウスパッドの最大静摩擦力は、①静止した状態から動き出したときの初動の最大静摩擦力と、②滑走中から反対方向に切り返したときの最大静摩擦力に違いが生まれるものと、そうでないものが存在することが分かっている。
マウスパッドの初動の評価は、最大静摩擦力だけでは説明することができない。最大静摩擦力に加え、スティックスリップの大小、そのスパン、マウスパッドの硬度などが関係し合っていると考えている。
G740TH(湿度60%) | 横方向(X軸方向) 最大静摩擦力 | 縦方向(Y軸方向) 最大静摩擦力 | Y軸-X軸の 最大静摩擦力の差 |
---|---|---|---|
①静止状態から動き始め | 93.845 gf | 100.710 gf | 6.865 gf |
②滑走中から切り返し後 | 124.935 gf | 121.140 gf | -3.795 gf |
①-②の差 | -31.090 gf | -20.430 gf | – |
G740THの①静止状態から動き始めの最大静摩擦力は
- 横方向(X軸方向)は93.845 gfであり、初動の重さ・軽さはデータベース上、並みである。
- 縦方向(Y軸方向)は100.710 gfであり、初動の重さ・軽さはデータベース上、並みである。
- 横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の差は、縦方向(Y軸方向)優勢の6.865 gfで、その値は小さいが考慮した方が良い差である。
G740THの②滑走中から切り返した後の最大静摩擦力は
- 横方向(X軸方向)は124.935 gfであり、①より31.090 gf重たくなる。そして、初動の重さ・軽さはデータベース上、とても重たい。
- 縦方向(Y軸方向)は121.140 gfであり、①より20.430 gf重たくなる。そして、初動の重さ・軽さはデータベース上、重たい。
- 横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の差は、横方向(X軸方向)優勢の3.795 gfであり、その値は小さい。
①静止状態から動き始めよりも②滑走中から切り返し後のほうが、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に最大静摩擦力が順当に大きくなる点はシンプルで分かりやすいが、①よりも最大静摩擦力が急激に大きくなる点は考慮しなければいけない。
最大静摩擦力の数値がよく似たマウスパッド
本製品とよく似た、静止状態から動き始めの最大静摩擦力を示すマウスパッドを以下に挙げるが、滑走中から切り返した後の最大静摩擦力や、硬度やスティックスリップ、標準偏差、厚み、反発弾性については全く考慮していないので、実際のフィーリングと異なる点に留意していただきたい。
- MM350 CHAMPION SERIES
- QcK HEAVY
スティックスリップ
静止状態から動き出し始めた時に生じた静摩擦から動摩擦が安定するまでの間に発生する、滑りと固着とが交互に起きる間欠運動である。300種類以上のマウスパッドを測定してきた経験上、ほとんどのマウスパッドにスティックスリップ現象を確認している。
スティックスリップが発生しているからといって、設計品質や製造品質に問題があるという訳ではないことに強く留意していただきたい。
スティックスリップは、実際のフィーリングで表現するとマウスパッドのキレやもたつきに相当し、発生していないか、そのスパンが非常に短いほどキレがよいマウスパッドになる。逆にスパンが長かったり、振幅が大きいほど初動にキレがない、ぬるっとしたマウスパッドになる。
あくまで仮説だが、キレがあるマウスパッドはAPEX LEGENDSのような非常に高い頻度でエイム操作を求められたり、トラッキングエイムを主するゲームではもたつきを感じにくく、疲れにくいので、そのようなマウスパッドが合っているかもしれない。逆にVALORANTのようなプリエイムやフリックエイムを主とし、高い頻度でエイム操作をすることが稀なゲームタイトルをメインでプレイする場合は、スティックスリップが精密なエイムを補助するのではないかと考えている。
また、硬度が柔らかくなるほど、不規則かつ長いスパンでスティックスリップが発生しやすく、硬度が硬いほど、スティックスリップが短くなる傾向にあるが、もちろんイレギュラーも存在する。
G740THは、最初に最大静摩擦力を迎えてから動摩擦力が安定するまでの間にスティックスリップ現象が発生している。時間経過と共にそれが徐々に解放されていく極めて典型的な波形を示している。
規則的かつ典型的なスティックスリップが発生しているので、G740THの初動に鋭いキレは全くない。
スティックスリップ現象が発生している時間は①静止状態から動き始めと②滑走中から切り返し後とで以下の通りである。
条件 | 横方向(X軸方向) スティックスリップ発生時間 | 縦方向(Y軸方向) スティックスリップ発生時間 |
---|---|---|
①静止状態から動き始め | 約0.70秒 | 約0.62秒 |
②滑走中から切り返し後 | 約0.78秒 | 約0.83秒 |
滑走速度
G740THの滑りは、並み程度に滑るバランスタイプに分類できるが、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)とで標準偏差の影響で滑りが異なり、考慮しなければいけない差がある。
物体が動き出した後の摩擦力のことで、動いている物体にかかる摩擦力。つまり初動とスティックスリップを超えたあとに人が感じるマウスパッドの「滑走速度」と表現されているものである。
ゲーミングマウスパッドの動摩擦力は、①静止状態から動き始めと②滑走中から切り返し後とで明らかな違いは認められず、非常によく似た数値と波形を示すことが分かっている。
標準偏差とは、あるデータが平均値からどの程度外れているかを示す指標である。この場合、動摩擦力のデータが平均値周辺でどの程度ばらついているかが分かる。これは平均動摩擦力が同じ値を示していても、仮に標準偏差が1.0と2.0のふたつが出た場合、前者のほうが滑り易く、後者のほうが滑りにくいものだということが分かる指標になる。
また、一概に標準偏差が小さいほど良いものであったり、大きいほど悪いものだという訳では全くない点に留意いただきたい。
標準偏差は、触覚でいう「マウスパッドの表面の滑らかさや粗さ」や、マウスパッド本体の「柔らかい・硬い」など複合的な要素によって左右されると考えている。

マウスパッドの滑走速度は動摩擦力だけでは説明ができない。動摩擦力と標準偏差と硬度などの要素が関係し合っていると考えている。
動摩擦力を測定して得られた生データに、それに対応する標準偏差を重みとして加えた③加重平均動摩擦力と、標準偏差の結果は表の通りである。
G740TH(湿度60%) | 横方向(X軸方向) | 縦方向(Y軸方向) | Y軸-X軸の差 |
---|---|---|---|
③加重平均動摩擦力 | 27.041 gf | 29.863 gf | 2.822 gf |
標準偏差 | 1.516 | 2.253 | – |
G740THの③加重平均動摩擦力は
- 横方向(X軸方向)は27.041 gfで、25.000 gfから29.999 gfの範囲内に収まっているので、バランスタイプに分類されるが、標準偏差が1.516であるため、フィーリングは弱くコントロール寄りになる。
- 縦方向(Y軸方向)は29.863 gfで、25.000 gfから29.999 gfの範囲内に収まっているので、バランスタイプに分類されるが、標準偏差が2.253であるため、フィーリングはやや強くコントロール寄りになる。
- 横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の差は2.822 gfと小さい。
動摩擦力の波形について
切り返し前と後に関わらず、G740THの横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)の動摩擦力の波形は、マクロでは全体的に大きく逸脱した波形は認められず、ミクロでは横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に、目立つ振幅が分かるので、平均動摩擦力に対するデータのばらつきの様子が見てとれる。
加重平均動摩擦力がよく似たマウスパッド
本製品とよく似た③加重平均動摩擦力を示すマウスパッドを以下に挙げるが、硬度や標準偏差、厚み、反発弾性については全く考慮していないので、実際のフィーリングと異なる可能性がある点に留意していただきたい。
- FOCUS 3
- QcK HEAVY
湿度による滑りの変化
G740THの湿度ごとの初動と滑走速度の変化について評価する前に、湿度50%と60%でそれぞれ測定した理由について、気になる場合は以下のリンクを参照願いたい。

なお、湿度50%のデータはすべて暫定値であり、今後加筆修正する際にデータや評価が変わることが十分あり得るため、ご理解いただきたい。
湿度50%と60%の横方向(X軸方向)の初動の違い
G740THの横方向(X軸方向)の最大静摩擦力は、湿度が変化しても数値はほとんど変化しない。
- ①静止状態から動き始めの最大静摩擦力は、湿度50%よりも湿度60%のほうが滑り出しが1.675 gf軽いが、ほとんど考慮しなくてよいほどの差である。
- ②滑走中から切り返し後の最大静摩擦力は、湿度50%よりも湿度60%のほうが滑り出しが2.180 gf重いが、ほとんど考慮しなくてよいほどの差である。
G740TH横方向(X軸方向) | 湿度50%(暫定値) 最大静摩擦力 | 湿度60%(確定値) 最大静摩擦力 | 湿度60%-50%の 最大静摩擦力の差 |
---|---|---|---|
①静止状態から動き始め | 95.520 gf | 93.845 gf | -1.675 gf |
②滑走中から切り返し後 | 122.755 gf | 124.935 gf | 2.180 gf |
①-②の差 | -27.235 gf | -31.090 gf | – |
湿度50%と60%の縦方向(Y軸方向)の初動の違い
G740THの縦方向(Y軸方向)の最大静摩擦力は、湿度が変化すると最大静摩擦力も変化する。さらに、滑走中から切り返し後の最大静摩擦力は大きく変化する。
- ①静止状態から動き始めは、湿度50%よりも湿度60%のほうが滑り出しが7.810 gf重い。
- ②滑走中から切り返し後は、湿度50%よりも湿度60%のほうが滑り出しが34.620 gf重い。この差は、熟考しなければいけない。
- 湿度50%時、①静止状態から動き始めよりも②滑走中から切り返し後の最大静摩擦力の方が小さく、湿度60%時の場合と比べて関係性が逆転している。
G740TH縦方向(Y軸方向) | 湿度50%(暫定値) 最大静摩擦力 | 湿度60%(確定値) 最大静摩擦力 | 湿度60%-50%の 最大静摩擦力の差 |
---|---|---|---|
①静止状態から動き始め | 92.900 gf | 100.710 gf | 7.810 gf |
②滑走中から切り返し後 | 86.520 gf | 121.140 gf | 34.620 gf |
①-② の差 | 6.380 gf | -20.430 gf | – |

湿度50%と60%の横方向(X軸方向)の滑走速度と標準偏差の違い
G740THは湿度が変化しても加重平均動摩擦力にほとんど変化はないが、標準偏差は湿度50%の方が大きくなるため、湿度60%の時と比べてコントロール寄りのフィーリングに変化する。
G740TH横方向(X軸方向) | 湿度50%(暫定値) | 湿度60%(確定値) | 湿度60%-50%の差 |
---|---|---|---|
④加重平均動摩擦力 | 28.040 gf | 27.041 gf | -0.999 gf |
標準偏差 | 1.821 | 1.516 | – |
湿度50%と60%の縦方向(Y軸方向)の滑走速度と標準偏差の違い
G740THは湿度が変化しても加重平均動摩擦力にほとんど変化はないが、標準偏差は湿度50%の方が小さくなるため、湿度60%の時と比べてバランス寄りのフィーリングに変化する。
G740TH縦方向(Y軸方向) | 湿度50%(暫定値) | 湿度60%(確定値) | 湿度60%-50%の差 |
---|---|---|---|
④加重平均動摩擦力 | 29.779 gf | 29.863 gf | 0.084 gf |
標準偏差 | 1.924 | 2.253 | – |
類似マウスパッドとの比較
G740THと比較する対象に、材質や厚み、最大静摩擦力の数値などの点で類似しているG640sとCorsair MM350 championを選んだ。
G640sとの比較

G640s(湿度60%)と比較してG740TH(湿度60%)は
- 表面硬度はほぼ同じ。
- ベース硬度はG740THのほうが若干硬い。
- G640sの硬度のばらつきは表面側はA評価、ベース側はS評価なのに対しG740THは表面側はDランク、ベース側はEランクで平滑性に欠ける。
- 静止状態から動き始めの初動(最大静摩擦力)は、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に僅かに軽い。
- 滑走中から切り返し後の初動(最大静摩擦力)は、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に重たくなる。
- 滑走速度(平均動摩擦力)は、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に重たい。
MM350 championとの比較

MM350 champion(湿度60%)と比較してG740TH(湿度60%)は
- 表面硬度とベース硬度はG740THのほうが若干硬い。
- 硬度のばらつきはG740THとMM350 championとで変わらず、表面側はDランク、ベース側はEランクで平滑性に欠ける。
- 静止状態から動き始めの初動(最大静摩擦力)は、ほぼ変わらない。
- 滑走中から切り返し後の初動(最大静摩擦力)は、複合的に大きく異なる。
- 滑走速度(平均動摩擦力)は、横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共に軽い。
- 表面組織は、G740THのほうが撚糸同士の遊間が詰まっているように見える。
対センサー相性
- 測定条件と掲載センサー
-
測定条件
- グラフ xSum(m/s)-Time
- 移動量 1inch
- 最大速度 300mm/min
- 加速度 200mm/s^2
- DPI 800
- PollingRate 1000Hz
掲載センサー
- PMW 3360 (BenQ ZOWIE ZA13-C)
- PAW 3370 (Endgame Gear XM2we)
- PMW 3389 (ZYGEN NP-01)
- PAW 3395 (Pwnage StormBreaker)
- HERO 25K (Logicool G PRO X SL)
- Focus + (Razer Viper Ultimate)
- Focus Pro 30K (Razer Viper V2 Pro)
- Finalsensor (Finalmouse Starlight-12)
2023年9月時点の現行マウスセンサー8種類で相性テストを行った結果、特に不良は確認されなかった。
使用感
ここからは筆者の主観とこれまでのデータを織り交ぜながら、G740THの使用感を書いていく。なお使用マウスはG Pro X SuperlightにESPTIGER マウスソール Arc2 G Pro X Superlight用を組み合わせたものと、すべてノーマルのWAIZOWL OGM PRO FEATHERである。
まず筆者のG740THの最初の個体は、ハンプ(凸部)の存在がはっきりと分かる不良個体であった。強い光を当てれば影がくっきりと浮き出て、指で撫でればしっかりとその存在が分かる。このレビューは、正常な個体でレビューをするために、改めてG740THをもう一枚用意して評価しているのでご安心いただきたい。
G740THは厚さ5mm(実測値4.54mm)で反発弾性を充分に感じる厚みがあり、表面硬度は54で硬すぎず柔らかすぎないバランスで調整されている。エイム操作時に鉛直方向に強く荷重をかけてしまう人でも、マウスにかかる余分な力を分厚い中間層のクッションで横方向に逃がすことができるのでマウスの位置がずれることはないだろう。マウスを押し下げることで追加の摩擦と乗り越え抵抗を得ることは一応可能だが、大きく期待できるほどではない。
ぬるっとした初動でキレの良さはない。硬度にばらつきがあるデータを示したとおり、マウスを摺動させると表面に不規則な凹凸を感じるため、安定したエイム操作をすることは難しい。
湿度50%と60%時において、縦方向(Y軸方向)の初動(最大静摩擦力)の変化が生じる点以外は湿度による滑り性の変化を受けにくいマウスパッドという性質を示しているので、湿度50%時の確定値で再度検証する必要がある。実際に湿度を変えて使ってみたが、筆者のフィーリングでは確かに湿度による滑りの変化を受けにくいように感じた。
横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)共通して、静止状態からの初動が軽く、切り返し後の初動のほうが重くなり、滑走速度にほとんど差がない分かりやすいパターンなので慣れるのに時間はかからないマウスパッドだった。しかし慣れた後でも、先述した不快な操作感とマウスの移動方向に追従して位置がずれるので、筆者はこのマウスパッドは好きにはなれない。
G740THは時間経過と共にスティックスリップが徐々に解放されていく典型的なパターンを示しているので、扱いに慣れるまで簡単な部類に入るが、マウスの切り返し操作にもたつきを嫌い、エイムのキレを求める人には向いていない。つまり、トラッキングエイムが主となるゲームタイトルをプレイしている人には向いていないと考える。
G740THのスティックスリップの存在と、その扱いに慣れるまで簡単なパターンは、VALORANTやCS2のようなプリエイム・フリックエイムが主となるゲームタイトルをプレイする人にとって、精密なエイムをアシストすることが期待できるので、そちらのほうが合っているのではないかと思う。
総合評価
このレビューを読んで、あなたがFPSゲームなどにおいて絶対的な勝利を目指すならこのG740THは買うべきではない。
G740THは、勝利に強く拘らず、Logicoolという世界一のゲーミングデバイスメーカーのブランド名を冠したゲーミングマウスパッドが、ゲーミンググレードや競技シーンに求められる最低限の性能を満たしていなくてもそれで良くて、他社のゲーミングマウスパッドよりも安い価格で、いつでもどこでもほしいときに同じ消耗品を買えるポイントがとても合理的だと感じるような人に向いている。
マウスの移動方向に追従する脆弱なベースの滑り止め、マウスパッド全体的に発生している著しい硬度のばらつき、光や触覚ではっきりと分かるハンプの存在。設計品質通りに製造されているか、メーカー自身が確認しているかすら怪しい。
ただ、個人的にはたとえ新品でも自分自身が購入した製品は、手にした時点で製造品質の確認をしなければいけない大切さを教えてくれたマウスパッドであるので、非常に感謝している。