ゲーミングマウスパッド
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VAXEE PA BlackとPA Pcuteの違いについて②

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Vaxee PA BlackとVaxee PA Pcuteについて、記事を二本に分けて定量・比較レビューする。

二本目の本稿は、ほぼフルスペックで定量レビューを行う。導入からファーストインプレッションまでレビューした記事は下記リンクへ。

VAXEE PA BlackとPA Pcuteの違いについて①
VAXEE PA BlackとPA Pcuteの違いについて①

Compare

Vaxee

PA Black

販売価格 3,820円~

総合評価(S-E 6段階評価)

A (2023/12/10)

滑走速度のタイプ

バランスに分類

表面硬度ランク

MIDに分類

表面

クロスファイバー

ベース

高密度フラットラバー

サイズ

470×390×3.5 mm

昇華熱式印刷

なし

長所

・価格が3,820円と適正価格。常に在庫が潤沢にある。ゲーミンググレードに求められる性能を欠かさず全て持ち合わせている。

注意点

・PA Blackは他のPAシリーズと比べて若干巻き癖がある。

短所

・ない。敢えて記述するならばマウスパッドサイズの大型化の波に乗れていないところか。XLサイズ若しくはスクエアサイズ展開を期待する。

with

Vaxee

PA Pcute

販売価格 3,920円~

総合評価(S-E 6段階評価)

A (2023/12/10)

滑走速度のタイプ

バランス に分類

表面硬度ランク

MIDに分類

表面

クロスファイバー

ベース

高密度フラットラバー

サイズ

470×390×3.5 mm

昇華熱式印刷

あり

長所

・価格が3,920円と適正価格。魅力的なデザインと色鮮やかなプリントのシナジーとインパクト。ゲーミンググレードに求められる性能を欠かさず全て持ち合わせている。

注意点

・PA Winter 23は季節限定商品であるため、購入可能期間が限られている。

短所

・なし。

製品・メーカーについて

Vaxee PAシリーズは、Vaxeeから2022年5月に発売されたゲーミングマウスパッドである。

様々なゲームタイトルにおいて、プロアマ問わずさまざまなプレイヤーに愛されている。

2023年現在、Vaxee PAシリーズは、常設ラインナップのPA OUTSET、PA ZYGENや、夏冬にクリエイターからデザイン公募するPA WinterやPA Summerなどのフルグラフィックプリントが施されたPAと、PAから熱昇華印刷を省いたPA Blackの2種類が存在する。

今回は、Vaxee PA Blackと、Winter 23デザイン公募で総投票数4,225票で、1位を獲得したPA Pcuteを測定したデータに基づいて比較レビューする。そして、愛されている理由を詳らかにしていく。

投票結果発表- “WINTER23” デザイン公募
投票結果発表- “WINTER23” デザイン公募
画像1:PA PcuteとPA Black ①

測定内容と方法について

これからマウスパッドの“硬度”と、マウスパッドの横方向・縦方向・斜めごとの静止状態からマウスを動かし始めたパターンの“初動の最大静摩擦力”と、移動中のマウスの向きを変更させた“切り返しの最大静摩擦力”、最大静摩擦力を迎えてから動摩擦力が安定する区間までに発生する“スティックスリップ”、滑走速度や滑り性などとあらゆる言葉で表現されがちな“平均動摩擦力”とその“標準偏差”について評価していく。

使用している機材や内部評価については下記リンクへ。

ゲーミングマウスパッドの評価について
ゲーミングマウスパッドの評価について

硬度と厚み

マウスパッドの表面と裏面に仮想の座標平面を描き、第一象限から第四象限で4か所に分割して、その象限ごとに10回を2セット計80回ずつ硬度の測定を行った。取得したデータを用いて、硬度のばらつきについて独自の基準で分析も行った。

その結果は以下の通りである。厚みは誤差の範囲で小さく収まっているものの、硬度の方はPA PcuteのほうがPA Blackよりも表面と裏面ともに若干やわらかいことが分かった。インクを定着させるために、少なくとも加圧加熱するプロセスを通っている影響か。

PA BlackとPA Pcuteともに、非常に優秀なSランク(分散0.3未満)であった。これはマウスパッドのどの箇所を硬度計で測定してもマウスパッドの硬度が一定であることを示している。

製品名厚み表面硬度とランク裏面硬度とランク
PA Black3.60 mm49S(分散0.3未満)50S(分散0.3未満)
PA Pcute3.67 mm46S(分散0.3未満)45S(分散0.3未満)
表1 : PA Black / PA Pcuteの硬度とランクテーブル(単位 : なし)

表面硬度と裏面硬度のポジショニングマップ

これは筆者が選んだ他社製のマウスパッドと比較して、PA BlackとPA Pcuteの表面と裏面の硬度がどれに似ているのか、どこに位置しているのかを示している。縦軸は裏面の硬度、横軸は表面の硬度の剛柔である。

余談だが、巷では“似ている”と評価されているVaxee PAシリーズと、ZOWIE G-SR-SEシリーズはまず“硬度”から違う。

画像2 : 表面硬度と裏面硬度のポジショニングマップ

最大静摩擦力

結論、PA BlackおよびPA Pcuteの最大静摩擦力も異なる。

摩擦測定機を使用して摩擦力(摩擦係数)・標準偏差を測定した。得られたデータから波形を出力し、静摩擦力のピーク、つまり静止状態のマウスが動き出し始める瞬間である“初動”と、移動中のマウスの向きを反転させたときの“切り返し”の最大静摩擦力を以下に示す。

  • 摺動速度:30mm/sec
  • 負荷荷重:150g
  • 摺動距離:60mm
  • 摺動回数:2回
  • サンプリングスピード:1 msec
  • サンプル:ESPTIGER Arc 2 汎用ソール

静止状態からマウスを動かし始めたパターンの“初動の最大静摩擦力

X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも“初動の最大静摩擦力”はPA BlackのほうがPA Pcuteよりも7.510 gfから8.610 gf 大きい。この値は、誤差ではなく繊細な人間であれば有感可能な差である。

初動の最大静摩擦力X軸(横方向)Y軸(縦方向)斜め(45°)
①PA Black82.43087.77082.430
②PA Pcute74.92079.38073.820
①と②の差異7.5108.3908.610
表2 : PA Black / PA Pcute “初動の最大静摩擦力”テーブル(単位 : gf)

移動中のマウスの向きを反転させたときの“切り返しの最大静摩擦力”

詳細は後述するが、“初動”よりも“切り返し”の最大静摩擦力が大きくなっているのがPA Pcuteで、小さくなっているのがPA Blackであることが分かる。

それぞれの差は、X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも20.510 gfから23.990 gf である。この値は、鈍感な人間でも有感可能な差であり、PA BlackとPA Pcuteが互いに違うマウスパッドを示す重要なデータである。それぞれのマウスパッド“初動の”最大静摩擦力の値は近い値であったのにも関わらず、である。

切り返しの最大静摩擦力X軸(横方向)Y軸(縦方向)斜め(45°)
①PA Black66.07080.14068.080
②PA Pcute90.060100.65090.970
①と②の差異-23.990-20.510-22.890
表3 : PA Black / PA Pcute “切り返しの最大静摩擦力”テーブル(単位 : gf)

単品の“初動”と“切り返し”の最大静摩擦力とその差異

PA Black単独の“初動”と“切り返し”の最大静摩擦力の評価として、X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも7.630 gfから16.360 gfの幅で“切り返し”時の方の値が小さい。つまり切り返しの方が軽く感じる。

PA Pcute単独の“初動”と“切り返し”の最大静摩擦力の評価として、X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも15.140 gfから21.270 gfの幅で“切り返し”時の方の値が大きい。つまり切り返しの方が重たく感じる。

“初動”に対する“切り返し”の最大静摩擦力のねじれ関係について考慮せず、単純に“初動”と“切り返し”の最大静摩擦力の差異ができる限り小さい方が良いのであれば、PA Blackを選ぶと良いだろう。特にY軸(縦方向)の差異は、7.630 gfと比較的小さい。

PA BlackX軸(横方向)Y軸(縦方向)斜め(45°)
初動82.43087.77082.430
切り返し66.07080.14068.080
差異16.3607.63014.350
表4 : PA Black 最大静摩擦力 テーブル(単位 : gf)
PA PcuteX軸(横方向)Y軸(縦方向)斜め(45°)
初動74.92079.38073.820
切り返し90.060100.65090.970
差異-15.140-21.270-17.150
表5 : PA Pcute 最大静摩擦力 テーブル(単位 : gf)

これまでの説明で分かるように、一般的に滑り出しのタイプと言われるものは、“最大静摩擦力”は“初動”と“切り返し”とで値が大きく変わったりするので、一概にバランスなどとタイプ分けすることが難しく、安直に分けると混乱を生じかねないので現時点では避けたい。

“初動”の最大静摩擦力と硬度のポジショニングマップ

これは我々が選んだ他社製のマウスパッドと比較して、PA BlackとPA Pcuteの“初動”の最大静摩擦力と表面の硬度が、どれに似ているのか、どこに位置しているのかを示している。縦軸は“初動”の最大静摩擦力、横軸は表面の硬度を示している。

画像3 : X軸(横方向)の“初動”の最大静摩擦力と硬度
画像4 : Y軸(縦方向)の“初動”の最大静摩擦力と硬度
画像5 : 斜め(45°)の“初動”の最大静摩擦力と硬度

“切り返し”の最大静摩擦力と硬度のポジショニングマップ

これは我々が選んだ他社製のマウスパッドと比較して、PA BlackとPA Pcuteの“初動”の最大静摩擦力と表面の硬度が、どれに似ているのか、どこに位置しているのかを示している。縦軸は“初動”の最大静摩擦力、横軸は表面の硬度を示している。

画像6 : X軸(横方向)の“切り返し”の最大静摩擦力と硬度
画像7 : Y軸(縦方向)の“切り返し”の最大静摩擦力と硬度
画像8 : 斜め(45°)の“切り返し”の最大静摩擦力と硬度

スティックスリップ(SS)

最大静摩擦力(起点)を迎えてから、動摩擦力の波形が安定する直前(終点)までの時間を測れば、スティックスリップが何秒間起きていたか(Stick Slip Time : SST)が分かる。波形を観察すれば、滑りと固着とが交互に起きる間欠運動がどのように解放されていくかが分かる。それを以下に示す。

Q
スティックスリップ(SS)とは

静止状態から動き出し始めた時に生じた静摩擦から動摩擦が安定するまでの間に発生する、滑りと固着とが交互に起きる間欠運動である。300種類以上のマウスパッドを測定してきた経験上、ほとんどのマウスパッドにスティックスリップ現象を確認している。

スティックスリップが発生しているからといって、設計品質や製造品質に問題があるという訳ではないことに強く留意していただきたい。

スティックスリップは、実際のフィーリングで表現するとマウスパッドのキレやもたつきに相当し、発生していないか、そのスパンが非常に短いほどキレがよいマウスパッドになる。逆にスパンが長かったり、振幅が大きいほど初動にキレがない、ぬるっとしたマウスパッドになる。

あくまで仮説だが、キレがあるマウスパッドはAPEX LEGENDSのような非常に高い頻度でエイム操作を求められたり、トラッキングエイムを主するゲームではもたつきを感じにくく、疲れにくいので、そのようなマウスパッドが合っているかもしれない。逆にVALORANTのようなプリエイムやフリックエイムを主とし、高い頻度でエイム操作をすることが稀なゲームタイトルをメインでプレイする場合は、スティックスリップが精密なエイムを補助するのではないかと考えている。

また、硬度が柔らかくなるほど、不規則かつ長いスパンでスティックスリップが発生しやすく、硬度が硬いほど、スティックスリップが短くなる傾向にあるが、もちろんイレギュラーも存在する。

結論、PA BlackおよびPA Pcuteは、布製マウスパッドにおいて最も典型的な、「時間経過と共にスティックスリップが徐々に解放されて収束していく」正弦波であった。そして下記に、それぞれ留意すべきポイントを示す。

PA Blackのスティックスリップ

PA Blackのスティックスリップ区間の波形は布製マウスパッドにおいて最も典型的な、「時間経過と共にスティックスリップが徐々に解放されて収束していく」正弦波である。一つ気になる点は、X軸(横方向)の“切り返し”のSSTが0.855sと若干長い点に留意すべきだろう。

画像9 : PA Black X軸(横方向)の“初動”のスティックスリップ波形
画像10 : PA Black X軸(横方向)の“切り返し”のスティックスリップ波形
画像11 : PA Black Y軸(縦方向)の“初動”のスティックスリップ波形
画像12 : PA Black Y軸(縦方向)の“切り返し”のスティックスリップ波形
画像13 : PA Black 斜め(45°)の“初動”のスティックスリップ波形
画像14 : PA Black 斜め(45°)の“切り返し”のスティックスリップ波形
PA BlackSS終点SS起点SST
X初動0.6000.0220.578
X切り返し3.0802.2250.855
Y初動0.6900.0240.666
Y切り返し2.8002.2230.577
斜め初動0.7000.0230.677
斜め切り返し2.8452.2220.623
表6 : PA Black Stick Slip Time テーブル(単位 : s)

PA Pcuteのスティックスリップ

PA Pcuteは、PA BlackのSSTと比べて全体的に、約0.100秒長くなる傾向にある。スティックスリップ区間の波形は布製マウスパッドにおいて最も典型的な、「時間経過と共にスティックスリップが徐々に解放され収束していく」正弦波である。他の軸と比べてX軸(横方向)の“初動”と“切り返し”の差が約0.200sとSSTが長いことに留意すべきだろう。

画像15 : PA Pcute X軸(横方向)の“初動”のスティックスリップ波形
画像16 : PA Pcute X軸(横方向)の“切り返し”のスティックスリップ波形
画像17 : PA Pcute Y軸(縦方向)の“初動”のスティックスリップ波形
画像18 : PA Pcute Y軸(縦方向)の“切り返し”のスティックスリップ波形
画像19 : PA Pcute 斜め(45°)の“初動”のスティックスリップ波形
画像20 : PA Pcute 斜め(45°)の“切り返し”のスティックスリップ波形
PA PcuteSS終点SS起点SST
X初動0.6720.0250.647
X切り返し3.0602.2230.837
Y初動0.7900.0250.765
Y切り返し3.0702.2250.845
斜め初動0.7600.0250.735
斜め切り返し3.0002.2240.776
表7 : PA Pcute Stick Slip Time テーブル(単位 : s)

動摩擦力(滑走速度)

Q
動摩擦力とは

物体が動き出した後の摩擦力のことで、動いている物体にかかる摩擦力。つまり初動とスティックスリップを超えたあとに人が感じるマウスパッドの「滑走速度」と表現されているものである。

膨大なデータを取ってきた筆者の知見と経験に基づけば、動摩擦力は最大静摩擦力のように“初動”と“切り返し”とで値に大きな差が生ずる傾向にないので、本稿では“初動”と“切り返し”の加重平均動摩擦力を合算した値を示し、レビューすることにする。例外や規格外のマウスパッドは特別にデータを用意し紹介する。

動摩擦力(動摩擦係数)と標準偏差の両方が小さいほど滑り易いと考えることができるので、静摩擦力のピークとスティックスリップ発生区間を超えた後に到達する、物体が安定して動いている区間での動摩擦力のデータとそれに紐づく標準偏差とで、動摩擦力の加重平均をとった。分散で加重平均も同時に計算したが、標準偏差で加重平均をとった値と大きな差がなかったため、今回は標準偏差を用いることにする。

Q
標準偏差とは

標準偏差とは、あるデータが平均値からどの程度外れているかを示す指標である。この場合、動摩擦力のデータが平均値周辺でどの程度ばらついているかが分かる。また、一概に標準偏差が小さいほど良いものであったり、大きいほど悪いものだという訳ではない。

標準偏差は、触覚でいう「マウスパッドの表面の滑らかさや粗さ」や、マウスパッド本体の「柔らかい・硬い」など複合的な要素によって左右されると考えている。

新東科学株式会社 摩擦摩耗試験機の選び方
新東科学株式会社 摩擦摩耗試験機の選び方

摩擦測定機を使用して摩擦力(摩擦係数)・標準偏差を測定した。

  • 摺動速度:30mm/sec
  • 負荷荷重:150g
  • 摺動距離:60mm
  • 摺動回数:2回
  • サンプリングスピード:1 msec (0.001sごとサンプルデータが取得可能)
  • サンプル:ESPTIGER Arc 2 汎用ソール

PA BlackおよびPA Pcuteは、動摩擦力は最大静摩擦力のように“初動”と“切り返し”とで値に大きな差が生ずる傾向にないので、本稿では“初動”と“切り返し”の加重平均動摩擦力を合算した値を示すことにする。もちろん、例外や規格外のマウスパッドも存在するのでそれはその都度データを用意してみなさんに紹介する予定である。

PA BlackおよびPA Pcuteの加重平均動摩擦力

結論、PA BlackおよびPA Pcuteの加重平均動摩擦力は非常に近い値で結果が出た。筆者の手元にある測定済みのマウスパッド300種類のマウスパッドデータベースの中で相対的にタイプで分けるならば、暫定的ではあるがこれは共にバランスタイプである。

PA Blackは、X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも、19.377 gfから19.800 gfの範囲内でコンパクトに収まっており、縦・横・斜めに動かしてもほぼ同じ感覚でマウスを動かせるだろう。

PA Pcuteは、Y軸(縦方向)・斜め(45°)が20.294 gf・20.190 gfと、20.000 gf台であるのに対して、X軸(横方向)は17.933 gfであるので、これは考慮したほうが良いだろう。

PA Black加重平均動摩擦力標準偏差
X軸合算19.377 gf1.01
Y軸合算19.851 gf1.12
斜め合算19.800 gf1.17
表8 : PA Black 加重平均動摩擦力と標準偏差
PA Pcute加重平均動摩擦力標準偏差
X軸合算17.933 gf1.31
Y軸合算20.294 gf1.37
斜め合算20.190 gf1.13
表9 : PA Pcute 加重平均動摩擦力と標準偏差

PA BlackとPA Pcuteの摩擦波形について

PA BlackとPA Pcuteの波形は美しい。ゲーミンググレードたるクロスファイバーサーフェイスとまったく硬度にばらつきのない高密度フラットラバーベースが実現できる、一本筋の通った全くブレない動摩擦力の正弦波形が見てとれる。

癖が少ない「時間経過と共にスティックスリップが徐々に解放されていく」スティックスリップを超えたその先には、揺るぎないスパンが待っている。このようなマウスパッドは、あなたのe-Sportsに対する情熱と実力とポテンシャルを余すことなく引き出してくれる。

PA Blackの摩擦波形

画像中の青と紫の縦線については無視していただきたい。

動摩擦力のスパンは懐疑なし。SSTに関しては先述の通り。PA BlackはX軸(横方向)の“切り返し”の摩擦波形を除き、よく似ておりSSの“振幅”はピークを迎えてからすぐに収束していくように見えるので、実際の操作感はPA Pcuteよりも“キレ”が良いか。

X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも動摩擦力の標準偏差は1.01から1.17の範囲内で収まっており、波形を見てもデータにばらつきがないことが見てとれる。

画像21 : PA Black “初動”の摩擦正弦波 X軸(横方向)
画像22 : PA Black “切り返し”の摩擦正弦波 X軸(横方向)
画像23 : PA Black “初動”の摩擦正弦波 Y軸(縦方向)
画像24 : PA Black “切り返し”の摩擦正弦波 Y軸(縦方向)
画像25 : PA Black “初動”の摩擦正弦波 斜め(45°)
画像26 : PA Black “切り返し”の摩擦正弦波 斜め(45°)

PA Pcuteの摩擦波形

画像中の青と紫の縦線については無視していただきたい。

動摩擦力のスパンは申し分なし。SSTに関しては先述の通り。SSの滑りと固着の“振幅”はX軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれもPA Blackよりも大きいか。

恐らく、PA Blackよりも硬度が柔らかいことと、昇華熱式印刷の影響で表面組織の性質が変化しているため、PA PcuteのほうがPA Blackよりも標準偏差の値は若干大きい。

X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも動摩擦力の標準偏差は1.13から1.37の範囲内で収まっており、波形を見てもデータにばらつきが少ないことが見てとれる。

画像27 : PA Pcute “初動”の摩擦正弦波 X軸(横方向)
画像28 : PA Pcute “切り返し”の摩擦正弦波 X軸(横方向)
画像29 : PA Pcute “初動”の摩擦正弦波 Y軸(縦方向)
画像30 : PA Pcute “切り返し”の摩擦正弦波 Y軸(縦方向)
画像31 : PA Pcute “初動”の摩擦正弦波 斜め(45°)
画像32 : PA Pcute “切り返し”の摩擦正弦波 斜め(45°)

加重平均動摩擦力と硬度のポジショニングマップ

これは我々が選んだ他社製のマウスパッドと比較して、PA BlackとPA Pcuteの“初動”と“切り返し”の加重平均動摩擦力を合算した値と硬度がどのマウスパッドにどれに似ているのか、どこに位置しているのかを示している。縦軸は“加重平均動摩擦力、横軸は表面の硬度である。

画像33 : PA Black / PA Pcute 加重平均動摩擦力 X軸(横方向)と硬度のポジショニングマップ
画像34 : PA Black / PA Pcute 加重平均動摩擦力 Y軸(縦方向)と硬度のポジショニングマップ
画像35 : PA Black / PA Pcute 加重平均動摩擦力 斜め(45°)と硬度のポジショニングマップ

対センサー相性

Q
測定条件と使用センサー

測定条件

  • グラフ xSum(m/s)-Time
  • 移動量 1inch
  • 最大速度 300mm/min
  • 加速度 200mm/s^2
  • DPI 800
  • PollingRate 1000Hz

使用センサー

  • PMW 3360 (BenQ ZOWIE ZA13-C)
  • PAW 3370 (Endgame Gear XM2we)
  • PMW 3389 (ZYGEN NP-01)
  • PAW 3395 (Pwnage StormBreaker)
  • HERO 25K (Logicool G PRO X SL)
  • Focus + (Razer Viper Ultimate)
  • Focus Pro 30K (Razer Viper V2 Pro)
  • Finalsensor (Finalmouse Starlight-12)

マウスパッド対センサーごとの相性については、下記の条件にすべて合致した場合に限り、ここにデータと合わせて記述する。

  1. 我々の環境で検証中に問題が発生。または報告が複数挙がっている。
  2. 問題の原因が、マウスパッド側にあると特定できた。
  3. 再現性のある不具合であり、検証中に様々な形でデータを取得することができた。

2023年12月時点の現行マウスセンサー8種類で相性テストを行った結果、特に問題は確認されなかった。

概括と総合評価

硬度

  • PA Blackの表面硬度は49、裏面硬度は50。表裏共に硬度のばらつきは全くない。
  • PA Pcuteの表面硬度は46、裏面硬度は45。表裏共に硬度のばらつきは全くない。
  • PA BlackのほうがPA Pcuteよりも硬い。

“初動”の最大静摩擦力

  • PA BlackとPA Pcuteの“初動”の最大静摩擦力は、7.510 gfから8.610 gfの幅で異なる。
  • PA BlackのほうがPA Pcuteより“初動”の最大静摩擦力が大きい。

“切り返し”の最大静摩擦力

  • PA BlackとPA Pcuteの“切り返し”の最大静摩擦力は、20.510 gfから23.990 gfの幅で異なる。
  • PA Blackは、“初動”よりも“切り返し”のほうが7.630 gfから16.360 gfの幅で値が小さい。
  • PA Pcuteは、“初動”よりも“切り返し”のほうが15.140 gfから21.270 gfの幅で値が大きい。
  • 単純に“初動”と“切り返し”の最大静摩擦力の差異ができる限り小さい方が良いのであれば、PA Blackを選ぶと良いだろう。特にY軸(縦方向)の差異は、7.630 gfと比較的小さい。

スティックスリップ

  • PA BlackおよびPA Pcuteは、布製マウスパッドにおいて最も典型的な、「時間経過と共にスティックスリップが徐々に解放されていく」正弦波であった。
  • PA Pcuteは、PA BlackのSSTと比べて全体的に、約0.100秒長くなる傾向にあった。

加重平均動摩擦力と標準偏差

  • PA BlackおよびPA Pcuteの加重平均動摩擦力(滑走速度)は、バランスタイプである。
  • PA Blackは、X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも、19.377 gfから19.800 gfの範囲内でコンパクトに収まっており、どこの方向に動かしても同じ感覚でマウスを動かせるだろう。
  • PA Blackの標準偏差は、X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも動摩擦力の標準偏差は1.01から1.17の範囲内で収まっており、波形を見てもデータにばらつきがない。
  • PA Pcuteは、Y軸(縦方向)・斜め(45°)が20.294 gf・20.190 gfと、20.000 gf台であるのに対して、X軸(横方向)は17.933 gfであるので、これは考慮しなければならないだろう。
  • PA Pcuteの標準偏差は、X軸(横方向)・Y軸(縦方向)・斜め(45°)のいずれも動摩擦力の標準偏差は1.13から1.37の範囲内で収まっており、波形を見てもデータにばらつきが少ない。
  • 硬度がPA Blackよりも柔らかいことと昇華熱式印刷の影響で表面組織の性質が変化しているため、PA Pcuteのほうが、PA Blackよりも標準偏差の値は若干大きい。

対センサー相性

  • 2023年12月時点の現行マウスセンサー8種類で相性テストを行った結果、特に問題は確認されなかった。

総合評価

画像36:PA PcuteとPA Black ②

最後に、一本目の記事と本稿の内容と、筆者の感想を織り交ぜながらまとめる。

表面の手触りはさらさらとしており、筆者が普段から使用しているPulsar製 ES eSports Arm Sleeveとの相性も特に問題無かった。

高密度フラットラバーベースは、あらゆる机でもずれることのない満足のいく防滑性能を有している。

Vaxee PA BlackおよびVaxee PA Pcuteは、共に硬度にばらつきが皆無。これは動摩擦力の波形を見ていただければ分かるように、安定したマウス操作を実現する。硬度は測定した数値の通りで沈み込みにくく、反発は強い。

軟らかすぎず硬すぎない丁度いい硬度と、筆者の手元にある測定済みのマウスパッド300種類のマウスパッドデータベースの中で、相対的にバランスタイプに分類できる加重平均動摩擦力を備えたマウスパッドであるため、とても扱いやすく優秀なマウスパッドであると同時に、ベンチマーク的マウスパッドとしておすすめできる。

要はマウスパッド選びに悩んでいる方が、我々と共にマウスパッド探しの旅をはじめるにあたって、Vaxee PA BlackおよびVaxee PA Pcute(PAシリーズ)を持っておけば、これよりも軟らかい方がいいのか、硬い方がいいのか。初動や切り返しの重さは軽くしたいのか、重くしたいのか。スティックスリップは短い方がいいのか、長いほうがいいのか。滑走速度は、より滑りを求めたいのか、滑らない方が良いのかなどを調べること基準に相応しいのである。

再三再四になるが、“初動”の最大静摩擦力はよく似ているものの、“切り返し”の最大静摩擦力の大小が全く違う。“初動”よりも軽い方がいいか重い方がいいかそれは使用者の判断や好みに委ねたい。その“個性”を頭とマウスを操作する己の手・腕・肩にいれておけば十分に使いこなせるだろう。

プリエイムやフリックエイムが主となるゲームタイトルを遊ぶ方にとっては、癖の少ないスティックスリップは、そのパターンを体得しやすく、逆に利用することで精密なエイムを補助することが期待できる。

しかし、十分にスティックスリップが発生するので、高頻度でマウスを大きく動かしたり、トラッキングエイムが主となるゲームタイトルを遊ぶ方や、マウスの切り返し操作にもたつきを嫌い、エイムのキレを追求する方には向いていない。

よって、マウスパッド選びに悩んでいたり、VALORANTやCS2などのゲームにおいて、勝利を強く希求するのであればVaxee PA BlackとPA Pcute(その他PAシリーズ)を、一度は使ってみるべきである。

マウスパッドの基本色たる生のブラックカラーの選択肢。そして、様々なクリエイターが生みだした非常にクオリティの高いデザインを、色鮮やかに美しくプリントできる技術と豊富なカラーバリエーション。

本稿にて可能な限り定量データを詳らかにした結果、すべて項目においてゲーミンググレードたる納得できる性能を持ち合わせており、非の打ち所がない。

筆者は、愛されているその理由を知った。

画像37:PA Black
画像38:PA Pcute ①
画像39:PA Pcute ②
Vaxee

PA Black

販売価格 3,820円~

Vaxee

PA Pcute

販売価格 3,920円~

一本目の記事はこちらからどうぞ。

VAXEE PA BlackとPA Pcuteの違いについて①
VAXEE PA BlackとPA Pcuteの違いについて①
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