【83キー】磁気スイッチ搭載！8000Hz対応の高性能ゲーミングキーボード HOVEY WORKS ZENT75-HE レビュー【2.25kg】

キーボードレイアウトとデザイン

HOVEY WORKS ZENT75-HEは、83キー搭載の75%サイズUS配列ラピッドトリガー対応ゲーミングキーボードです。このサイズは、テンキーレスに近い機能性を保ちながら、マウスパッドスペースとマウスの可動域を最大限確保できる、ゲーミングに最適なコンパクトデザインとなっています。

デザイン面では、高品質なアルミニウム筐体にマット仕上げの塗装を施し、装飾を抑えたシンプルで堅牢なインダストリアルデザインが洗練された印象を与えます。カラーバリエーションはグレー、オレンジ、ホワイトの3色を展開。本体は325.25 x 150 x 19.5mmとコンパクトですが、2.25kgの重量により安定した操作性を実現しています。

構造面では、Double-Shot PBT製キーキャップを採用し、複数のフォームと厚みのあるシリコンベース、さらに特許取得済みのZENT shell shield inner layerとouter layerを組み合わせることで、優れた吸音性と衝撃吸収性を実現しています。この構造により、打鍵時の不要な響きを効果的に抑制。標準搭載のGateron Jade Proスイッチとの相乗効果で、明確で上質な「コトコト」という打鍵感を実現しています。

RGBバックライトは約16.8万色の発光に対応し、約20種類の豊富なライティングパターンをカスタマイズできます。これにより、ユーザーの好みやデスク環境に合わせた細やかな光の演出が可能です。中央に配置されたUSB Type-C接続ポートは、マウス操作の妨げにならない位置で快適なPC接続を可能にします。

HOVEY WORKS ZENT75-HEは、国内正規代理店KIBUが取り扱う製品で、独自の内部構造と洗練されたデザインを見事に融合したHOVEY WORKSの国内展開キーボードです。

当サイトでは、本機を2025年のラピッドトリガーキーボード市場におけるトップモデルの一つとして評価しています。

ケースと付属品

HOVEY WORKS ZENT75-HEには、キーボード本体のほか、USB Type-C専用ケーブル、2in1スイッチプラー、専用収納ケース、Gateron Jade Proの予備スイッチ2個が標準で付属しています。

この付属品構成はユーザーの利便性を最優先に設計されており、3つの重要な特徴があります。まず、同梱される専用収納ケースが、持ち運びや保管時の衝撃からキーボードを保護します。次に、予備スイッチ2個が付属することで、不測の事態に備えることができます。さらに、標準で付属するスイッチプラーにより、購入後すぐにカスタマイズやメンテナンスが可能です。

この充実した付属品構成により、追加購入の必要なく、すぐにキーボードを使い始めることができます。特に専用収納ケースの同梱は、この高級キーボードの価値を長期的に保護する重要な要素となっています。

キーキャップ

HOVEY WORKS ZENT75-HEのキーキャップには、厚みのあるPBTとダブルショット製法を採用しています。この組み合わせにより、長期間使用し続けても文字が物理的に消えにくく、優れた耐久性と使用感を実現しています。

キーキャップの適度な厚みは、タイピング時に心地よい「コトコト」という打鍵感を生み出します。採用されているCHERRYプロファイルは、ドイツのCherry社が1980年代に開発した伝統的なキーキャップ形状です。

CHERRYプロファイルは、タイピングとゲーミング両用の高い汎用性から、多くのユーザーに支持されている代表的なプロファイルの一つです。低めの高さと段差のあるスカルプチャード形状、キートップの円柱状の窪みが特徴で、エッジの丸みを抑えたシャープなデザインとなっています。

PBTはABSと比較して強度と耐久性に優れ、高い硬度と密度により物理的な摩耗に強い特性があります。優れた機械的強度と靭性を持ち、長期使用に最適な材質です。この素材の最大の利点は表面がテカリにくいことで、耐摩耗性に優れているため、汚れが付きにくく、お手入れも容易です。

ライティング

HOVEY WORKS ZENT75-HEのライティング機能は、設定は専用のウェブブラウザベースのソフトウェアから簡単に行うことができます。

RGBバックライトエフェクトは約20種類のパターンが用意されており、好みに応じて選択できます。エフェクトの速度は0～255の範囲で、輝度は完全オフから30段階まで詳細な調整が可能です。Gateron製Jade Proスイッチに設けられた透光窓からは美しいバックライトが放たれ、印象的な光の演出を実現します。

PCBに内蔵されたLEDは鮮やかな発光により、魅力的な視覚効果を演出します。各キーのRGBを個別に制御できるため、ゲーミングやタイピング時の没入感を高められるだけでなく、使用環境や好みに合わせて最適な発光パターンをカスタマイズすることが可能です。

なお、本製品のキーキャップは非透光性のPBT素材を使用しているため、暗所では印字が見えづらくなる可能性があることにご留意ください。

キースイッチ

HOVEY WORKS ZENT75-HEは、Gateron Jade Pro磁気スイッチを標準搭載しています。ホットスワップ対応により、TTC KOM RGBスイッチなどの高性能な他の磁気スイッチへの交換も可能です。

標準搭載のGateron Jade Pro磁気スイッチは、高性能なゲーミングキーボード向けに開発された磁気スイッチです。Gateron公式サイトによれば、このスイッチは36±5gfの軽めの初期圧、3.5±0.1mmの総ストローク、0.1-3.3mmの広いアクチュエーション範囲を備え、1億回の耐久性を実現しています。

構造面では、ポリカーボネート製トップハウジング、66ナイロン製ボトムハウジング、POMステムを採用し、20mmの長尺スプリングで優れた安定性を確保しています。特筆すべき特徴として、RGB透光性の高いトップハウジング、高速反発を実現する延長スプリング、永久磁石の採用が挙げられます。また、工場出荷時に潤滑処理が施されています。

性能面では、非接点方式とPCBのセンサーの組み合わせにより高速な応答と精密な打鍵検知を実現し、安定した一貫性のある動作をもたらします。打鍵音は、Sealed-Bottom構造により、心地よいコトコトとした重みのある音質を生み出しています。

使用感は、軽めの初期圧による快適な打鍵感、ステムとハウジングの精密な噛み合わせによる優れた軸安定性、そしてゲーミングに最適化された軽快で浅い打鍵特性が特徴です。このスイッチは、ゲーミング性能と快適なタイピング体験を高い次元で両立し、磁気式スイッチならではの優れた耐久性と安定性を実現しています。

滑り止めとチルト角

HOVEY WORKS ZENT75-HEは、アルミニウム製の一体型ケースデザインを採用しているため、従来の可動式キックスタンドではなく、人間工学に基づいた実測7度の固定チルト角度を採用しています。

この角度は手首の自然な角度に最適化されており、一般的なキーボードの第一段キックスタンド（約6度）と第二段キックスタンド（約9度）の中間に位置することで、多くのユーザーに理想的な打鍵角度をもたらします。固定式により、使用中のガタつきや角度のズレを完全に防ぎ、常に安定した打鍵姿勢を保つことができます。

底面の滑り止めは、従来の四隅配置ではなく、キーボード上部と下部に長尺のゴムパッドを採用しています。この設計により、接地面積が従来の4点式と比較して数十倍に増加し、デスク表面との密着性が大幅に向上しています。さらに、本体重量が2.25kgという重量級であることと相まって、激しいゲームプレイ時でも完璧な安定性を実現しています。滑り止めパッドの材質には高品質なシリコンゴムを使用しており、優れたグリップ力と耐久性を備えています。

筆者はほぼすべてのゲーミングキーボードを使用する際に、Wooting wrist restと組み合わせて使用しています。Wooting wrist restは高密度メモリーフォームを採用しており、手首をしっかりとサポートしながらも適度な柔らかさを備えています。ZENT75-HEのフロントケース高（19.5mm）とWooting wrist restの高さ（20mm）の組み合わせにより、手首が自然な角度で支えられ、長時間の使用でも疲労を最小限に抑えることができます。

ソフトウェア

ウェブソフトウェアと機能性

HOVEY WORKS ZENT75-HEは、ブラウザベースの設定ソフトウェア「Hoveyworks Driver」でキーボードの各種設定が可能です。このソフトウェアは日本語、英語、中国語に対応しています。

ソフトウェア内のパフォーマンス設定では、アクチュエーションポイントとラピッドトリガー機能（トリガーとリリース）、トップ・ボトムデッドゾーンを0.005mm単位で設定できるほか、搭載スイッチ（TTC KOM、TTC KOM RGB、Gateron Jade Switch）を選択することができます。

ライティング機能では、各キーの静的ライティングに加え、約20種類の動的エフェクトパターンを設定できます。エフェクトの速度は0～255の範囲で、輝度は完全オフから30段階まできめ細かく調整可能です。RGBバックライトでは、波状や点滅などの多彩なエフェクトを各キーに個別設定でき、高度なカスタマイズが可能です。ただし、動的ライティングエフェクトのモード選択メニューが日本語非対応であるため、各エフェクトパターンの内容を把握しにくいという課題があります。

キャリブレーション機能は自動・手動の両方に対応しており、SOCDによる入力補助機能も搭載しています。さらに、Fnレイヤーとキーリマッピングを活用することもできます。

トップデッドゾーン（AP：0.1mm DZ：0.0mm設定）

HOVEY WORKS ZENT75-HEのトップデッドゾーンは0.226mmを記録し、測定された全40機種中で3位という優れた性能を示しました。

上位機種との比較では、ELECOM GAMING VK720A（0.18mm）、WOBKEY RAINY75 RT Pro（0.183mm）に次ぐ位置であり、Logicool G PRO X TKL RAPID（0.23mm）を上回る性能を達成しています。

本製品は、競合製品と比べても遜色のない性能を実現しています。特筆すべきは、8000Hzという高いポーリングレートに対応しながら、入力切れを起こすことなく、安定した短いトップデッドゾーンを維持している点です。0.226mmという数値は実用的な範囲で十分に短く、FPSゲームなどの高速な入力が必要なシーンで優位性を発揮します。一般的なゲーミングキーボードと比較しても、明確な性能上の優位性を持っています。

総じて、HOVEY WORKS ZENT75-HEはトップデッドゾーンの性能においてトップクラスの位置にあり、特に8000Hz対応機種としては卓越した性能を示しています。実測値0.226mmは、現在市場に出回っているラピッドトリガーキーボードの中でも最高峰の性能の一つです。

リセットポイント（リリース：0.1mm設定）

HOVEY WORKS ZENT75-HEのリセットポイントは0.174mmを記録しました。これは最高性能のWooting 60HE RT0.15mm（0.093mm）やLUMINKEY Magger 68 HE（0.1mm）には及びませんが、同価格帯のWOBKEY RAINY75 RT Pro（0.17mm）と同等の性能であり、MelGeek MADE68 Pro（0.18mm）をわずかに上回っています。

性能面では、設定値0.1mmに対して実測値が0.174mmと若干の差異がありますが、短いリセットポイントと8000Hzの高速ポーリングレートを入力切れを起こすこと無く安定的に両立しています。

HOVEY WORKS ZENT75-HEのリセットポイント性能は最上位モデルには及ばないものの、同価格帯の競合製品と同等の性能を達成しています。特にRapid Trigger機能を活用するゲーミングキーボードとして、実用性の高い選択肢と言えます。

途中入力オン（プレス：0.1mm設定）

HOVEY WORKS ZENT75-HEの途中入力オンの実測値は0.172mmで、測定された全36機種中で中位（18位）となっています。同価格帯のWOBKEY RAINY75 RT Pro（0.176mm）とほぼ同等の性能を示しますが、MelGeek MADE68 Pro（0.139mm）には及ばない結果となりました。

実用面では、設定値0.1mmと実測値0.172mmに差異はあるものの、8000Hzの高速ポーリングレートとの組み合わせでも安定した入力性能を維持し、入力切れを起こすことなく、一般的なゲーミングキーボードを上回る応答性を実現しています。特にFPSゲームにおいて、優れた反応速度と安定した入力制御を発揮します。

HOVEY WORKS ZENT75-HEの途中入力オン性能は中位に位置しますが、同価格帯の製品と比較して十分な競争力があります。8000Hz対応機種として優れた安定性を持ち、実用性の高い選択肢です。途中オンの実測値0.172mmは、一般的なゲーミング用途において十分な速さと実用性を備えています。

ただし、この価格帯の製品としては設定値により近い動作を実現できる余地があり、今後のファームウェアアップデートによる途中入力オン性能の改善が期待されます。

途中入力オフ（リリース：0.1mm設定）

HOVEY WORKS ZENT75-HEの途中入力オフの実測値は0.170mmを記録しました。これはArbiter Studio KITSUNE（0.08mm）、Wooting 60HE（0.084mm）、ELECOM GAMING VK720A（0.117mm）などのトップクラス製品と比較すると、明確な性能差があります。

同価格帯の競合製品WOBKEY RAINY75 RT Pro（0.157mm）やMelGeek MADE68 Pro（0.146mm）と比べてもやや性能は劣りますが、従来のラピッドトリガーキーボードを上回る応答速度を実現しています。特にFPSゲームにおいて、優れた反応性を発揮します。

実用面では、設定値0.1mmに対して実測値が0.170mmと差異がありますが、8000Hzの高速ポーリングレートと組み合わせても安定した入力性能を維持し、入力の途切れは発生しませんでした。

途中オフの実測値、0.17mmという数値は一般的なゲーミング用途では十分な速さと実用性を備えています。ただし、この価格帯の製品としては、設定値により近い動作を実現できる余地があり、途中入力オフ性能は今後のファームウェアアップデートでの改善が望まれます。

ボトムデットゾーン（DZ：0.0mm設定）

HOVEY WORKS ZENT75-HEのボトムデッドゾーンは0.480mmで、全39機種中16位の性能です。一般的なゲーミング用途では十分な性能を持ち、8000Hz動作時の安定性と実用的な数値のバランスが取れています。

他のゲーミングキーボードと比較すると、RAZER HUNTSMAN V3 PRO（0.15mm）とは0.33mmの差があります。MCHOSE ACE 60 PRO（0.363mm）やMelGeek MADE68 Pro（0.392mm）といったハイエンドモデルとも0.1mm前後の性能差が生じています。

同価格帯の製品では、WOBKEY RAINY75 RT Pro（0.447mm）やHM Loong66 RS（0.483mm）と同等の性能を持っています。特にWOBKEY RAINY75 RT Proとは0.033mmの僅差です。

ZENT75-HEは8000Hzの高速ポーリングレート下でも安定した動作を実現しています。0.480mmという短いボトムデッドゾーンを維持しながら、クリーンな入力オフを実現する点が特徴です。磁気式スイッチとセンサー側の高度な信号処理の最適化によって、高い性能を実現しています。