鉄壁の滑り止めと沈み込みを“防ぐ”クッション性。バランスタイプのゲーミングマウスパッド VAXEE PD ゲーミングマウスパッド レビュー
VAXEE PDについて
VAXEEは2024年10月7日、新型ゲーミングマウスパッド「VAXEE PD」を発表しました。
同社によると、PDは以下のような特徴を持つといいます
- 新開発の高粘着ベース素材を採用し、激しい操作時でもパッドのずれを防止
- 強力な粘着性を実現するため、重量は975グラムと従来モデルPAの240グラムから大幅に増加
- 安定した基材により、30日間の巻き試験に合格し、使用時の平坦性を維持
- 厚さ5.0mmで丸みを帯びたエッジデザインを採用し、厚いパッドの縁かがり問題を解決しつつ操作性を向上
- 硬いベース素材でありながら、わずかな弾力性を保持し、強い圧力下でも沈み込みを防ぐクッション性を実現
- 表面はPAおよびPBモデルと同様だが、より硬い基材により滑走性が向上
- 寸法は480mm×400mm
VAXEEは、PDの生産工程について、成形後の加工や品質検査など各工程で手作業が必要であり、生産能力が限られていると説明しています。そのため、PDの小売価格はPBモデルに近い水準になる見込みです。また、現時点では不良率が比較的高いものの、歩留まりの問題を克服後、24年10月下旬に詳細情報を公開する予定だとアナウンスしています。
外観的特徴
VAXEE PDのデザインは、マウスパッド左下にきらりと光るVAXEEワンポイントロゴが入っただけのシンプルな黒い滑走面が特徴となっています。サイズは480mm×400mmで、現代のゲーミングマウスパッドに求められる十分な大きさを備えており、広範囲のマウス操作や低感度設定のプレイヤーにも対応できるようになっています。VAXEE PDはフラットパッケージに梱包されています。そのため、開封後すぐに巻き癖なく使用できます。
形状とエッジ
カッターマットの方眼を基準に、VAXEE PDの水平・垂直方向の歪みを目視で確認しましたが、変形は見られませんでした。VAXEE PDのエッジはステッチやパイピング加工がない、丸みを帯びたエッジデザインを採用しており、ゲーミングマウスがエッジに引っかかったり、乗り上げたりする心配がなく、スムーズな操作が可能となっています。
表面組織と底面
VAXEE PDの滑走面は、化学繊維を使用した編地により平滑さと滑らかさを実現しています。編地は横向きに施されています。これまで触れたマウスパッドの中でも、VAXEE PDは卓越したしっとりさと、さらさらとした手触りを持ち、非常に心地よくひんやりとした触感です。また、滑走面の表面組織はベースに対して水平・垂直方向ともに歪みなく接着されており、斜めのずれもありません。
VAXEE PDの底面には、やや強い粘着性を感じる滑り止め加工が施されています。指で触れたり机から剥がしたりする際にこの粘着性を感じますが、べたつきはありません。さらに、布製マウスパッドでありながらガラスマウスパッド並みの重量感があります。この重さと滑り止めの相乗効果により、使用中に机上での位置が全くずれることがありません。それは、全くずれることがない鉄壁の防滑性能です。
- 編み物と織物の違いについて
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編み物と織物は、どちらも糸を用いて布地を作る技術ですが、その構造や特性には明確な違いがあります
- 編物は、一本の糸をループ状に編み続けて布地を作ります。そのため、縦横に伸縮性があり、通気性が高く、型崩れしやすい特徴があります。
- 織物は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が直角に交差して布地を形成します。一般的に伸縮性が少なく、通気性が低く、シワになりやすい特性があります。
構造の違い
織物は「一段ずつ」布地を作るのに対し、編物は「一目ずつ」形を作ります。そのため、織物は平面的であるのに対し、編物は立体的な形状を持つことができます
- ゲーミングマウスパッドの防滑性能の重要性
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- 防滑性能の高いマウスパッドは、プレイヤーが激しくマウスを操作しても、マウスパッドの位置がズレません。これによりマウスの動きが正確に反映され、マウスの操作やエイムの精度が向上します。
- 特にFPSやMOBAなど、瞬時の反応が求められるゲームでは、マウスパッドのズレが致命的なミスを引き起こす可能性があります。
アームカバー(スリーブ)との相性
代表的なアームカバー(スリーブ)との相性は以下の通りです。
アームカバー(スリーブ) | VAXEE PD |
Pulsar Gaming Gears eS アームスリーブ | ◎ |
REJECT GAMING ARM SLEEVE | ○ |
KIBU Gear 布特化両面アームカバー for Gaming 表面 | × |
KIBU Gear 布特化両面アームカバー for Gaming 裏面 | ◎ |
WALLHACK ARM SLEEVE | ◎ |
表面硬度
VAXEE PDは、ベースに硬い素材を採用していますが、その種類は不明です。表面硬度は70を記録し、タイプは「HARD」に分類されました。布製マウスパッドの中で、これに似た硬度のものは稀で、ESPTIGERの初代BLAZEやVANCER ICEなどが挙げられます。さらに硬いものとしては、FREEFALL SV BASE Control+(硬度73.5)があります。
指で強く押すと微かな弾力性を感じますが、強い力がかかっても沈み込みを“防ぐ”クッション性を備えています。マウスで圧力をかけてもこのPDはほとんど沈まず、沈ませてブレーキをかけるのは事実上不可能でしょう。
静動摩擦測定(初動と滑り具合の評価)
- 静動摩擦測定条件と免責事項等について(クリックで開きます)
-
当サイトでは、マウスパッドの滑り性を定量的に評価するため、多機能型静動摩擦測定機と専用の治具、布マウスパッドはESPTIGER ARC2、ガラスマウスパッドはNitro Factory ACZ-Fを使用して摩擦データを測定しています。この高精度な機器により、マウスパッドの表面特性を詳細に分析することが可能となりました。
初動と滑りの評価を行い、他のマウスパッドと比較していきます。また、摩擦係数や硬度などの要素も考慮に入れ、総合的な評価を提供します。内容が徐々に専門的になるため、摩擦に関する用語や重要なポイントをまとめた補足ページを用意しました。このページでは、測定方法や結果の解釈についても詳しく説明しています。
測定に使用している装置はこちら多機能型静動摩擦測定機 TL201Tt免責事項等について免責事項・著作権評価について
初動の重さを以前はカテゴライズしていましたが、荷重が大きくなるほど初動の重さ係数(最大静摩擦係数)は小さくなることが分かりました。各マウスパッドで初動の重さ係数の変化が異なり、荷重に比例しないため、マウスパッド間での初動の重さ(最大静摩力)の単純な比較はできないと判断し、カテゴライズを中止しました。
滑り心地(平均動摩擦力および係数)について、マウスやマウスソールにかかる重さが変化しても、マウスパッドの動摩擦係数はほとんど変化しないことが分かりました。具体的には、測定機で確認できる範囲内で荷重による変動は見られるものの、その変動幅は小数点第三位程度です。そのため、動摩擦係数は小数第二位までの表記で十分な精度を確保できると判断しました。
カテゴライズについて
滑り心地は、平均動摩擦力の測定値に基づいて、以下の表のようにカテゴライズしています。※分類基準は予告なく変更される場合があります。
平均動摩擦力(単位:gf) 項目 – 13.0183 ハイスピード 13.0184 – 18.3832 スピード 18.3833 – 23.7481 スピードバランス 23.7482 – 29.1130 バランス 29.1131 – 34.4779 バランスコントロール 34.4780 – コントロール
初動の重さ(最大静摩擦力)
- 測定データ(クリックで開きます)
-
方向 | 最大静摩擦力 |
---|---|
X軸 | 93.0gf |
Y軸 | 93.4gf |
45度 | 93.2gf |
最大静摩擦力
最大静摩擦力は3つの方向でほぼ均一という結果がでました
- X軸:93.0gf
- Y軸:93.4gf
- 45度:93.2gf
この一貫性は、方向に関わらず安定した操作感を提供することを示唆しています。約93gfという値は、かなり高い静止摩擦を示しており、意図しない微小な動きを防ぐのに効果的です。特に、VALORANTのような精密なエイムが求められるゲームにおいて、この高い初動の抵抗は重要な役割を果たします。プレイヤーの意図しない微細なマウスの動きを抑制し、より正確なエイミングを可能にします。これにより、クリティカルな状況での安定性が向上し、ゲームパフォーマンスの向上につながる可能性があります。
滑り(平均動摩擦力)
- 測定データ(クリックで開きます)
-
方向 | 滑りの評価 | 平均動摩擦力 | 標準偏差 |
---|---|---|---|
X軸 | スピードバランス | 21.3gf | 1.20 |
Y軸 | バランス | 26.2gf | 1.40 |
45度 | バランス | 24.0gf | 1.13 |
滑りの評価
滑りの特性は方向によって異なります
- X軸:スピードバランス
- Y軸:バランス
- 45度:バランス
平均動摩擦力と標準偏差
平均動摩擦力と標準偏差は以下の通りです
- X軸:21.3gf(標準偏差1.20)
- Y軸:26.2gf(標準偏差1.40)
- 45度:24.0gf(標準偏差1.13)
Y軸の高い平均動摩擦力(26.2gf)は、垂直方向の動きに対する高め制動力を示しています。標準偏差が比較的低いことは、各方向で一貫した滑り感をもたらすことを示唆しています。
主要なマウスパッドと比較
硬度と最大静摩擦力のマッピングマトリックス
以下の図は、ゲーミングマウスパッドの硬度と最大静摩擦力(初動の重さ)の関係を示しています。
硬度と平均動摩擦力のマッピングマトリックス
以下の図は、ゲーミングマウスパッドの硬度と平均動摩擦力(滑り心地)の関係を示しています。
硬度・最大静摩擦力(初動の重さ)・平均動摩擦力(滑り具合)
以下は、マウスパッドの硬度・最大静摩擦力(初動の重さ)・平均動摩擦力(滑り具合)を昇順でソートしたグラフです。
まとめ
VAXEE PDは、VAXEEが2024年10月7日に発表した新型ゲーミングマウスパッドです。
革新的な設計と素材
- 新開発の高粘着ベース素材を採用し、975グラムという重量級の設計により、激しい操作時でもパッドのずれを防止します。この重量は従来モデルPAの240グラムから大幅に増加しており、安定性を重視した設計であることがわかります
- 5.0mmの厚さと丸みを帯びたエッジデザインにより、マウスや腕がエッジに引っかかる問題を解決しつつ操作性を向上させています
性能特性
- 最大静摩擦力は約93gfと非常に高く、X軸、Y軸、45度方向でほぼ均一です。これにより、方向に関わらず安定した操作感を提供し、特にVALORANTのような精密なエイムが求められるゲームで重要な役割を果たします
- 滑りの特性は方向によって異なり、X軸とY軸・45度で異なる特性を持ちます。X軸はスピードタイプ、Y軸と45度はバランスタイプで、垂直方向の動きに対してより高い制御性をもたらします
- 平均動摩擦力は、X軸で21.3gf、Y軸で26.2gf、45度方向で24.0gfと、方向によって異なる特性を示しています。これらの値は、他のVAXEEモデルと比較してもやや高めであり、バランス寄りの性能を持ちつつも、硬いベースを使用しているため沈み込みによるブレーキがかからず、マウスの動かす際の体感スピードは向上しています
デザインと使用感
- シンプルな黒い滑走面に、左下にVAXEEのワンポイントロゴが入った洗練されたデザインです
- 480mm×400mmのサイズは、現代のゲーミングマウスパッドに求められる十分な大きさを備えており、広範囲のマウス操作や低感度設定のプレイヤーにも対応できます
- フラットパッケージに梱包されているため、開封後すぐに巻き癖なく使用できます
生産と価格
- 生産工程は手作業が多く、生産能力が限られているとのこと
- 価格はPBモデルに近い水準になる見込みです
現時点では不良率が比較的高いものの、VAXEEは歩留まりの問題を克服後、詳細情報を公開する予定です- 2024年11月22日の18時に予約開始で、価格は6,490円です
総合評価
VAXEE PDは全体的にバランスの取れた特性を持つマウスパッドと言えます。初動時の高い抵抗と方向によって異なる滑り特性は、精密な動きと強い制御性を求めるプレイヤーに適しています。特にY軸方向の強いコントロール性は、垂直方向の精密な動きを必要とするゲームジャンルで有利に働くでしょう。一方、X軸と45度方向のバランスの取れた特性は、多様なゲームプレイスタイルにも対応できます。高い静止摩擦力は意図しない微小な動きを防ぎ、安定したエイミングをサポートするでしょう。
[レビューサンプル提供:VAXEE JAPAN]
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