【レビュー】SteelSeries QcK Performanceシリーズ、Speed・Balance・Control 3モデルの特徴と選び方
SteelSeriesが3月に発売したゲーミングマウスパッド「QcK Performance」シリーズについて、実際の使用感や性能を詳細にレビューします。
このシリーズは、ゲーマーのプレイスタイルに合わせて選べる3つのモデル(Speed、Balance、Control)で構成されています。
各モデルは、マウスの滑りやすさや制御性を異なるバランスで提供し、プロゲーマーからカジュアルユーザーまで幅広いニーズに応える設計です。価格はL(490×420×3.5mm)が5,980円、XL(900×400×3.5mm)が6,980円となっています。

製品概要と基本仕様
共通仕様
- サイズ:490mm × 420mm × 3.5mm
- ベース素材:天然ゴム
- エッジ処理:縫製加工
各モデルの表面素材と特性が異なる点が最大の特徴となっています。




QcK Performance – Speed:高速操作重視モデル
表面特性と操作感
Speedモデルは、その名前が示す通り、マウスの滑りやすさを最優先に設計されています。表面には特殊なコーティングが施されており、マウスを軽い力で素早く動かすことができます。実際の使用感では、マウスを置いた瞬間から滑らかさを実感できます。
使用感の詳細
静摩擦力、動摩擦力ともに非常に低く、マウスの滑り出しが非常に軽く、滑走中の抵抗もほとんど感じられません。これにより、フリックエイムやトラッキングエイムなど、高速かつ広範囲なマウス操作がスムーズに行えます。


QcK Performance – Balance:万能型モデル
バランス設計の特徴
Balanceモデルは、SpeedとControlの中間的な特性を持つ設計となっています。適度な滑りやすさと止めやすさを両立させることで、幅広いゲームジャンルに対応できる汎用性の高さが特徴です。
表面の質感は、Speedほど滑らかではありませんが、Controlほど抵抗感もありません。この絶妙なバランスにより、様々なプレイスタイルに適応できます。
使用感の詳細
実際の使用では、マウスの初動から停止まで一連の動作がスムーズに行えます。特に、エイムの微調整と大きな振り向き動作の両方が求められるゲームにおいて、その真価を発揮します。「クセがなく使いやすい」ため、初心者から上級者まで幅広いユーザーに受け入れられる性能を有してます。


QcK Performance – Control:精密操作重視モデル
高い制御性能
Controlモデルは、マウスの停止性能を重視した設計となっています。表面には微細な凹凸加工が施されており、マウスとの摩擦を適度に高めることで、精密な操作を可能にしています。
この特性により、細かなエイム調整や、狙った位置でマウスを確実に停止させることができます。特に、スナイパーライフルを使用する場面や、精密操作において威力を発揮します。
操作感の特徴
静摩擦力、動摩擦力ともに比較的高く、マウスの滑り出しにしっかりとした抵抗感があり、滑走中もマウスをピタッと止めることができます。これにより、細かなマウスの動きを正確にコントロールでき、逸走するを防ぐ効果が期待できます。


3モデルの摩擦データ比較
X軸方向の摩擦測定データ比較
マウスパッド名 | 最大静摩擦力(gf) | 動摩擦力(gf) |
Steelseries QCK BALANCE | 72.1 | 14.6 |
Steelseries QCK CONTROL | 71.2 | 16.3 |
Steelseries QCK SPEED | 67.7 | 12.4 |



Y軸方向の摩擦測定データ比較
マウスパッド名 | 最大静摩擦力(gf) | 動摩擦力(gf) |
Steelseries QCK BALANCE | 75.5 | 18.6 |
Steelseries QCK CONTROL | 69.7 | 17.4 |
Steelseries QCK SPEED | 69.3 | 13.4 |



45度方向の摩擦測定データ比較
マウスパッド名 | 最大静摩擦力(gf) | 動摩擦力(gf) |
Steelseries QCK BALANCE | 73.1 | 16.9 |
Steelseries QCK CONTROL | 70.8 | 16.6 |
Steelseries QCK SPEED | 69.3 | 14.2 |



分析内容
各方向での性能ランキング
静摩擦力(立ち上がりの重さ)
- 最も低い(滑り出しが軽い)
- Steelseries QCK SPEED (X軸: 67.7gf , Y軸: 69.3gf , 45度: 69.3gf )
- Steelseries QCK CONTROL (X軸: 71.2gf , Y軸: 69.7gf , 45度: 70.8gf )
- Steelseries QCK BALANCE (X軸: 72.1gf , Y軸: 75.5gf , 45度: 73.1gf )
動摩擦力(滑走中の抵抗)
- 最も低い(滑りが速い)
- Steelseries QCK SPEED (X軸: 12.4gf , Y軸: 13.4gf , 45度: 14.2gf )
- Steelseries QCK BALANCE (X軸: 14.6gf , Y軸: 18.6gf , 45度: 16.9gf )
- Steelseries QCK CONTROL (X軸: 16.3gf , Y軸: 17.4gf , 45度: 16.6gf )
全体的にSteelseries QCK SPEEDが最も摩擦力が低く、スピード系の特性を持っていることが測定データから読み取れます。次いでSteelseries QCK BALANCE、Steelseries QCK CONTROLがコントロール系の特性を持っていると言えます。
方向性による性能差の有無
- Steelseries QCK SPEED: 全体的に摩擦力が低いですが、Y軸方向の動摩擦力(13.4gf)が他の方向と比較してわずかに高い傾向が見られます 。
- Steelseries QCK BALANCE: Y軸方向の静摩擦力(75.5gf)と動摩擦力(18.6gf)が他の方向と比較して高く 、縦方向の動きに若干の抵抗がある可能性があります。
- Steelseries QCK CONTROL: 各方向での摩擦力のばらつきが比較的少なく、安定した操作感を提供すると推測されます。
異常値や特徴的なデータの指摘
各マウスパッドにおいて、測定値のばらつきは許容範囲内であり、特筆すべき異常値は見られませんでした。ただし、この値は複数回測定されたデータの中央値です。必ずしもこのグラフにリンクしているわけではありません。
ゲーミング用途での実用性評価
Steelseries QCK SPEED: 全体的に静摩擦力、動摩擦力ともに低く、マウスの滑り出しが非常に軽く、滑走中の抵抗も少ないため、高速なマウス操作が求められるFPSゲームにおいて、フリックショットやトラッキングなど、迅速なエイム操作をサポートする「スピード系」マウスパッドとして非常に優れています。
Steelseries QCK BALANCE: QCK SPEEDとQCK CONTROLの中間に位置する特性を持ち、適度な滑りと止めやすさを両立しています。幅広いジャンルのゲームに対応できる「バランス系」マウスパッドと言えます。Y軸方向の抵抗が若干高いため、縦方向のエイム調整には慣れが必要かもしれません。
Steelseries QCK CONTROL: 静摩擦力、動摩擦力ともに比較的高く、マウスの滑り出しに抵抗があり、滑走中も安定した操作感を提供します。精密なエイムや細かなマウスコントロールが求められるゲームにおいて、ピクセル単位の微調整をサポートする「コントロール系」マウスパッドとして適しています。低DPIでのFPSなど、正確なポジショニングが重要なタイトルで真価を発揮するでしょう。
他社製品との比較
X軸(横方向)の摩擦データ比較
マウスパッド名 | 最大静摩擦力 (gf) | 動摩擦力 (gf) | 特徴的な数値 |
Steelseries QCK SPEED | 67.7 | 12.4 | 全モデル中、動摩擦が最も低い。圧倒的な滑走性能。 |
Steelseries QCK BALANCE | 72.1 | 14.6 | スピード系に近いバランスタイプ。 |
Steelseries QCK EDGE Large 23 | 76.9 | 15.1 | 標準的なバランスタイプ。 |
Razer GIGANTUS V2 | 84.8 | 15.6 | 初動は重めだが滑りは標準的。 |
Steelseries QCK CONTROL | 71.2 | 16.3 | QCKシリーズの中ではコントロール寄り。 |
Logicool(Logitech) G640S | 78 | 16.3 | バランスタイプの定番。 |
Pulsar ES2 4mm XL | 82.5 | 17.8 | ややコントロール寄りのバランスタイプ。 |
ARTISAN ハヤテ乙 SOFT | 82.9 | 19.4 | コントロール性能が高い。 |
Pulsar ES2 3mm XL | 87.2 | 19.6 | 初動が重く、コントロール性が高い。 |
ARTISAN ゼロ SOFT | 94.1 | 28.4 | 全モデル中、静摩擦・動摩擦共に最も高い。最強のコントロール性能。 |
Y軸(縦方向)の摩擦データ比較
マウスパッド名 | 最大静摩擦力 (gf) | 動摩擦力 (gf) | 特徴的な数値 |
Steelseries QCK SPEED | 69.3 | 13.4 | Y軸も非常に滑りやすい。 |
Steelseries QCK CONTROL | 69.7 | 17.4 | Y軸の方がX軸より滑りが重い(コントロール寄り)。 |
Logicool(Logitech) G640S | 84.7 | 17.3 | Y軸の方が初動が重い。 |
Steelseries QCK EDGE Large 23 | 83.6 | 18.0 | X軸に比べ静摩擦・動摩擦共に高い。 |
Razer GIGANTUS V2 | 85.6 | 18.1 | Y軸の方が動摩擦が高い。 |
Steelseries QCK BALANCE | 75.5 | 18.6 | X軸(14.6gf)との動摩擦差が非常に大きい。 |
ARTISAN ハヤテ乙 SOFT | 80.1 | 19.2 | X軸とY軸の差が少ないバランスの取れたコントロールパッド。 |
Pulsar ES2 4mm XL | 85.3 | 21.2 | Y軸のコントロール性能が高い。 |
Pulsar ES2 3mm XL | 87.2 | 21.7 | Y軸のコントロール性能が高い。 |
ARTISAN ゼロ SOFT | 88.5 | 23.8 | Y軸も非常に高いコントロール性能を維持。ただしX軸よりは軽い。 |
45度(斜め方向)の摩擦データ比較
マウスパッド名 | 最大静摩擦力 (gf) | 動摩擦力 (gf) | 特徴的な数値 |
Steelseries QCK SPEED | 69.3 | 14.2 | どの方向にも滑りが良い。 |
Steelseries QCK EDGE Large 23 | 86.2 | 16.3 | X軸とY軸の中間的な性能。 |
Logicool(Logitech) G640S | 80.3 | 16.4 | バランスの取れた性能。 |
Steelseries QCK CONTROL | 70.8 | 16.6 | X軸とY軸の中間的な性能。 |
Steelseries QCK BALANCE | 73.1 | 16.9 | X軸とY軸の中間的な性能。 |
Razer GIGANTUS V2 | 84.5 | 17.2 | バランスの取れた性能。 |
Pulsar ES2 4mm XL | 87.1 | 19.4 | ややコントロール寄り。 |
ARTISAN ハヤテ乙 SOFT | 87.3 | 20.0 | 高いコントロール性能。 |
Pulsar ES2 3mm XL | 90.6 | 21.2 | 高いコントロール性能。 |
ARTISAN ゼロ SOFT | 89.5 | 25.1 | 最強クラスのコントロール性能。 |
方向性による性能差(異方性)
X軸とY軸の摩擦に差があると、縦横でマウスの滑りが変わるため好みが分かれます。
- 異方性が大きいマウスパッド
- Steelseries QCK BALANCE: X軸(14.6gf)とY軸(18.6gf)の動摩擦差が4.0gfと非常に大きい 。縦方向の操作に強いブレーキがかかります。
- ARTISAN ゼロ SOFT: X軸(28.4gf)とY軸(23.8gf)の動摩擦差が4.6gfと最大 。水平方向のエイムをより強力に止めたい場合に有効かもしれません。
- 異方性が小さいマウスパッド
- ARTISAN ハヤテ乙 SOFT: X軸(19.4gf)とY軸(19.2gf)の動摩擦差がわずか0.2gf 。どの方向に動かしても非常に均一な操作感が得られます。
- Razer GIGANTUS V2: X軸(15.6gf)、Y軸(18.1gf) 。初動の異方性は小さいですが、動摩擦はY軸がやや重めです。
- Steelseries QCK SPEED: 全体的に差が小さく、均一な滑りを提供します 。
ゲーミング用途での実用性評価
- スピード系(トラッキングエイム向け)
- Steelseries QCK SPEEDが筆頭。低い摩擦で滑らかな追いエイムを実現。Apex LegendsやOverwatchなどの高速戦闘ゲームに適しています。
- コントロール系(フリックエイム向け)
- ARTISAN ゼロ SOFTが頂点。非常に高い摩擦力で、VALORANTやCS:GOのような精密なストッピングが求められるゲームで絶大な効果を発揮します。
- ARTISAN ハヤテ乙 SOFTやPulsar ES2シリーズも高いコントロール性能を持ち、安定したエイムをサポートします。
- バランス系(万能タイプ)
- Logicool G640S、Razer GIGANTUS V2、Steelseries QCK EDGEなどは、スピードとコントロールのバランスが取れています。幅広いジャンルのゲームをプレイするユーザーや、自分の好みがまだ定まっていない初心者におすすめです。
- Steelseries QCK BALANCEは、データ上ではY軸の摩擦が強く、やや癖のあるバランス系と言えます。
耐久性と品質について
素材の品質
3モデル共通して、ベース部分には高品質な天然ゴムが使用されています。この素材選択により、長期間の使用でも変形や劣化が起こりにくく、安定した性能を維持できます。
エッジ部分の縫製処理も丁寧に施されており、ほつれや剥がれといった問題は発生しにくい構造となっています。


メンテナンス性
表面の清掃は、各モデルとも馬毛ブラシやマウスパッドスウィーパーで簡単に行えます。特にSpeedモデルは汚れが付きにくく、日常的なメンテナンスの手間が少ないという利点があります。
Controlモデルは表面の凹凸により若干汚れが溜まりやすい傾向がありますが、定期的な清掃により性能を維持できます。

価格と選び方について
コストパフォーマンス
QcK Performance Lシリーズは、プレミアムゲーミングマウスパッドとしては適正な価格設定となっています。3モデルとも同一価格で提供されているため、性能差による価格の違いを気にする必要がありません。
長期間の使用を考慮すると、耐久性の高さから十分なコストパフォーマンスを期待できます。
選び方
どのモデルを選ぶかは、主にプレイするゲームジャンルと個人の好みによって決まります。

Speedを選ぶべき方
- ローセンシティビティ設定を使用する
- 素早いマウス操作を重視する

Balanceを選ぶべき方
- 複数のゲームジャンルをプレイする
- 初めてのゲーミングマウスパッド購入
- 迷った場合の安全な選択肢として

Controlを選ぶべき方
- 精密な操作を重視する
- 高DPI設定を使用する
- 長時間の集中プレイを行う
総合評価とまとめ
QcK Performance シリーズは、それぞれ明確な特徴を持つ3モデルの展開により、幅広いユーザーニーズに対応した優秀なゲーミングマウスパッドです。
Speedは高速操作を求めるFPSプレイヤーに、Balanceは汎用性を重視するユーザーに、Controlは精密操作を必要とするプレイヤーに、それぞれ最適な性能を提供します。
品質面では、素材選択から製造工程まで高い水準を維持しており、長期間の使用に耐える耐久性を備えています。価格設定も適正であり、価格に見合った価値を有するゲーミングマウスパッドといえます。
ゲーミングマウスパッドの購入を検討している方にとって、QcK Performance Lシリーズは有力な選択肢の一つとして推奨できる製品です。自身のプレイスタイルと用途を明確にした上で、最適なモデルを選択することで、ゲーミング体験の向上を期待できるでしょう。









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